第五話 天上天下唯我独(以下略)
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「ねえハルくん、そのズボン第一層からずっと履いてるみたいだけど、いい加減装備新調したらどうかね?」
「ん? ズボン?」
ここはアインクラッド第三層、ズムフトの街。北欧神話にでも存在するような巨大樹の幹をくり抜くようにして造られたその特徴的なマップの、その一角……いや、正確には一角に立っているNPCに話しかけることによって向かうことの出来るインスタントマップで、ハルキとグラントは朝食を食べながらくつろいでいた。そんな中での、他愛ない会話である。
だがこの話、実はハルキにとってはなかなか問題要素をはらむものだった。
「ああ、ズボン……まあほら、俺ソードスキルないし、金属装備とかにして体の重心を変えたくないんだよね、うん」
「へーぇ……アスリート志向ですねぇ」
実際の理由は全く違う所にある、もちろんハルキのその主張も一理はあるのだが……最大の原因は、もっと単純で。
つまるところ、SAOに存在する、女性の下半身装備の過半数はスカートなのだ。そして第四層が解禁された今現在もズボン型の装備で最大の耐久値を誇るものは、第一層で購入できるこれしかなく。
「まったく、スカートなんて何がいいのかわからねーっつーの。動きにくいったらありゃしないだろ」
「えっと? ハルくん何か言った?」
「あ……いや」
あの日、三日前のフロアボス戦終了後に、ハルキの秘密は遂に自分以外の存在……アスナによって看破されてしまった。彼女曰く、ただでさえその総人口が少なく、他のプレイヤーに声を掛けられやすい女性プレイヤーなら誰しも、集団の中で目立たないようにする工夫をある程度身につけているものであり。ハルキのそれも簡単に見破ることが出来るのではないか、という事だそうだ。
『でも、その雰囲気だと男性プレイヤーの事は上手く騙せているみたいね』
そうして、くすりと笑いながら解説をしてくれた細剣使いを、ハルキはぼんやりと思い出す。
『確かにハルキさん、どちらかというとボーイッシュな感じだものね。……あ、いい意味で言っているのよ?』
そう、だから最初から一応言ってはいたのだ。外見はリアルの顔とは思えない程に整った美少年であり、声音は平均的な男性の声に比べれば高くソフトである、と。結果として本人曰く素の口調であるその男言葉も相まって、プロフィールでも覗かれない限りはギリギリ女性だとは判別しにくい風貌なのだ。
……とまあ、そんな感じなんで、そろそろ、許してくれやしませんかね?
「で? 今日から、仲間集めするんだろ?」
「ん、そうだったか。まあ、二人じゃあ寂しいもんねー」
「いやお前が言い出したんだろ」
さ、さて。話
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