第三話 (×血みどろの 〇ち実ドロの)LA争い
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を集めて、攻略組の皆に伝えてたんだけどね?知らないの君たちだけね?
なにはともあれ、そう珍しく焦った表情で返答するグラントを一瞬見やり、そしてハルキは小さく息を吐く。
「……あのさ、グラント」
「ん? ハルくんどしたの?」
グラントは振り返ったが、フロアボスの方を向きながら俯いているハルキの表情はよく見えなかった。
「もしあんたがあの洞窟で閉じ込められていなかったら、あるいはもし、それ以外にもあんまりバカやらかさないでさ……第一層攻略の時点でもうあの攻略組に入れるくらいに強くなってたら。
その時は俺達みたいな一般プレイヤーを、もうちょっとでも助けてくれたかな?」
そう、それがハルキのわだかまりの正体だった。
目の前のこの落武者男が、どういう人間なのか。それは順当にこれから知り合ううちに少しずつ見出していく筈のものだったというのに。「ベータテスター」というその言葉は、ハルキからその機会を奪い去ってしまいそうで。彼を仲間として受け入れるチャンスを失わせてしまいそうで。
いや、そもそもベータテスター達全員をよく思わないこと自体おかしな話ではあるのだ。中にはビギナーのために援助を積極的に行っている者がいることもハルキには分かっていた。情けない話だがそれはもう、純粋に意地の問題だったのだ。
だからこそ、直後のグラントの返事は、ハルキにとってはとても嬉しいものだった。
「え? いやそりゃそうでしょ。置き去りになんてしたら絶対に後悔するだろ」
……本当に、いるんだ。こういうベータテスターだっているんだって。信じていいんだ。
置き去りにしたプレイヤーの事を考えて、悔やむベータテスターは、ちゃんといるんだ。
それはハルキにとっては本当の意味で、救いだった。
「え、ちょっとハルくん? 大丈夫? 体調悪い……って」
ハルキのいつもと違う雰囲気に違和感を覚えたグラントだったが、直後に攻略組からさらなる悲鳴が上がったのを聞き、もう一度ボス部屋の中央を見る。
どうやら毒の霧を浴びてしまい慌てていた十数名のプレイヤーによる前衛が、直後にイビルトレントによって放たれた範囲攻撃に巻き込まれて半壊してしまっているようだった。そして残念ながらヘイトが向いてしまっているのだろう、倒れているプレイヤーのうちの一人……腰に細剣の鞘を差した亜麻色の髪の女性プレイヤーに向かって、フロアボスはゆっくりと歩いている。
「へへ……そりゃ、嬉しいね。それだけでも、聞けて良かった」
横からの声に、再びグラントはハルキの方を向く。もう彼に先ほどまでの暗さは感じられなかった。
その代わりに感じるのは、隣にいてもひしひし感じる程の、凄まじい闘志。
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