第二話 ガードホリッカーとPFGB
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そうなるのかね。自ら逃げ道のない方に突っ込んじゃった阿呆の図である。現に彼はそれから十分前後は、あの狭い空間でひたすらコボルド軍曹の棍棒を避け続ける羽目になったらしい。
転機が訪れたのは、焚き火の中央に存在するレア宝箱に気付いた時。藁にもすがる思いでそれを開けると、中に入っていたのは今現在グラントが持っている、その異質な盾だった。この盾、耐久値が異様に高いようで、程度としてはさほど注意しなくとも正面からコボルト軍曹の棍棒を弾き返せるレベルの一級品だとか。
(……そういえば)
ハルキは思う。このゲーム内に存在するコボルド……特に上級のコボルドの中には、片手に剣や斧といった小型武器を持ち、もう片方に丸盾を持って戦うといったような戦闘スタイルをとるものも少なくなかったような。それを考えると、右手に棍棒を装備していたあのコボルド軍曹が左手に何も持っていなかったのは、宝箱の中身が彼の盾である事を暗示でもしていたんだろうか。茅場さん率いるアーガス社ってそういうとこ拘るのかな。
そして極めつけはここからである。コボルト軍曹の攻撃を無力化する術は手に入れたものの、倒すこともできないグラントさん。だからってずっと戦闘中では心身共に疲弊してしまう……この仮想現実内において心身とは如何なるものかとも思うが。そんなジレンマに陥った彼が出した結論が、まさかの、「宝箱のなかで眠る」だったのだ。
「だって、宝箱自体って基本的に破壊不能オブジェクトじゃん? 戦闘中とかにぶっ壊れてなくなちゃったー、なんてことはないでしょ? ね? ね?」
まあ、確かにその通りなのだが。そういう事思いついちゃって、かつ実践しちゃう辺りやっぱりアレだって事をこの男は絶対に理解してはいないだろう。
かくして、彼は一日のうちの殆どをコボルト軍曹の攻撃の防御に費やし、夜は宝箱の中で寝るという生活を、今日ハルキがやってくるまでの十日ほど強いられる事となった。
もう一度言う。十日である。もう訳が分かんねーな。
「で、でもさほら、これでスゲー盾も手に入ったし、一層の迷宮区攻略にはだいぶ貢献できるってモンだぜ」
「……もう終わってるよ、第一層迷宮区の攻略」
「……はぇ?」
グラントは目を見開いて身を乗り出す。
「……もう突破しちゃったの……?」
「ああ。あんたがあんな所で引きこもってる間に、攻略組はもう二層の迷宮区を制圧して、昨日三層の転移門がアクティベートされたよ」
「えぇ……まじっすかぁ……」
ハルキからそれを聞かされた自業自得男は、部屋のベッドにバフンと座り込むと、不貞腐れたようにウィンドウを弄り始める。
そして、それに気付き、動きを止めた。
「出遅れた……完
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