第一話 暗闇の中からコンニチワ
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代なのではないかと思われるが、それにしては少々老け顔である。ロングヘアーも相まって残念な風貌である。
だが何よりも最も今この場において致命的だったのは、そんな彼、武器を持っていないのである。しかしその代わりと言っては何だが、左手に持つ盾はそれ以外の装備とは似ても似つかぬしっかりとした造りのものだった。
金色の淵に黒い表面とシンプルなデザインながら、それはハルキの知る限り現段階ではどの街の売店NPCも売っていないものだ。それが一体何を意味するのか……それをハルキが考えるより先に、その男は次の行動に移っていた。
出だしから原始人さながらなムーブを決めたそのプレイヤーは、事もあろうにハルキを狙って着実に足を進めているコボルド軍曹の背中に力強くジャンプし、そしてその大きな背中に思いっきりしがみ付いたのだ。
「う、うそだろ……!?」
暗闇にハイドしプレイヤーを仕留める程度の狡猾さを持っていたこのモンスターも、この大胆なアクションに関しては流石に対処行動としてのプログラムは備えていないようだった。「はっ!?」と言っているかのように短く唸ると、コボルド軍曹は自身の背後に位置するらしい標的に追おうとしてくるくるとその場で回転を始めたのだ。
ハルキはここまでの一連の様相を半ば放心して眺めていたのだが、振り回されて苦しいのだろうその武器無しプレイヤーが暫くぐぬぬと呻いたのちに放った叫び声で、漸く我に帰ったようだった。
「おいぃぃぃ!? スタン切れただろぅ!? 早く倒してプリーズ!!」
そうだ、もう課せられた硬直時間はとっくに過ぎている。色々と言いたい事はあるけれども……何はともあれ、今は敵のヘイトも向こうに集まっていて、まさに好機到来である。
ハルキは先程の横殴りを食らった際に松明を手放していた左手を右手に添え、片手直剣たるスモールソードを両手で持ち直した。そしてその剣を大上段に構え直し。
「たぁぁぁぁぁああっっ!!」
まーたソードスキルじゃないよと思った人、残念ながらハルキは今のところ投剣スキルに至るまでの全てのソードスキルが使用不可である。
というわけで剣道において最も基本的な動きであり、彼が最も打ち馴染んでいるであろうその一撃によって、哀れなコボルド軍曹はらしくもなく甲高い叫び声を上げながらポリゴンのかけらとなって霧散する事となったのだった。
(……終わった)
終わってみれば静かなものである。どうやらその洞穴の中はそれ以上の道は目に見えて存在しないようであり、探索結果としては中にレアな宝箱のあるフィールドボス級コボルドのポップ場所であることが判明したのみだった。
早く他のプレイヤーにも知らせないと、もう不用意にここに来る人間がいなくなるように
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