第一話 暗闇の中からコンニチワ
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たその洞窟の中で唐突に判明した別の人間……プレイヤーの存在に、ハルキは反射的に声を張り上げていた。
だが、その姿はどこを探しても見当たらない。どこかに隠れているのかと思い、周りを大きく見回したハルキは……しかし、その瞬間にコボルド軍曹への注意をほんの少し、逸らしてしまったのだ。
「どこにいるんだ、姿をみせてくれ……ぐっ!?」
気がつくとハルキは宙を舞っていた。運が悪い、その一瞬の隙に、死ぬ直前の最後の足掻きと言わんばかりにコボルド軍曹が振り回した棍棒にクリーンヒットしてしまったのだ。
当たらなければどうという事はない攻撃も、当たってしまえば今のハルキのレベルでは致命傷に至るほどの大打撃である。ハルキは意識が希薄になっていく感覚を覚えながら、自分のヒットポイントがコボルド軍曹と同じくレッドゾーンまで一気に削られていくのを見た。
「く……くそっ……!」
そしてさらに悪い事に、吹っ飛ばされ天井に激突したハルキは、打撃属性の攻撃を受けた際によく生じる状態異常、スタンに陥っていた。身体を動かす事すらままならない彼は、受け身を取る事も叶わずうつ伏せに地面へと落下する。
このままでは、やられる。そう悟ったハルキは、無為な死者を出さないためとはいえ単独でこの様な場所、いわばコボルドの巣に来た事を後悔しながらも、視界の上方に見えるスタンの残り時間を睨みながら無理矢理に身体を動かそうとして。
そして、それを見た。
「……はい?」
ハルキはあまりゲームをする方ではなかったのだが、そんな彼でも今自分が目にしている光景は、後にも先にも中々お目にかかる事は出来ない異様なものだろう事を察する事が出来た。
ほら、ミミックっているじゃないですか。宝箱の中に潜んでいて、冒険者が油断して開けたところを一気に襲いかかる、あのタチの悪いアイツ。たまに街中の宝箱に潜んでるアイツ。確かにタチは悪いけれども、でも慣れれば流石に用心する様になるだろうし、色んなゲームでそういう類のトラップってあるもんじゃん?
……だけどさ。
逆に中に人間入ってるってパターンって、あんまり見かけないよね?
「ばばぁぁぁぁぁん!!!」
すぽーんと音が鳴りそうな勢いでその銀細工の宝箱の蓋が開いて、中からどこかの土管工さながらにジャンプして外に飛び出した人間がいた……いやだって、本当にそういう光景だったんですもの。
「……え……ちょっ」
ハルキは我を忘れてそのプレイヤーを凝視した。
体装備はさして自分と変わらない革製の防具だ、おそらくレベルも自分と同等かそれ以下だろう。長く伸びたやや茶色い髪の毛が宙を舞ってなんかすごい事になってる。背格好や動きの若々しさからこれまた自分とほぼ同年
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