第一話 暗闇の中からコンニチワ
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かった。そんなスポットがあるならとっくに現実世界と何らかの意思疎通が出来るというものであり、「向かった人間が誰も帰ってこない」というそれは間違いなく道中でモンスターに殺されてしまったからに決まっていた。
だからこそ、ハルキはその場へ向かっていた。そんな出まかせを信じてしまった不幸な人間を命の危機から救うために。
やがて森をさらに西に進んだところの小さな崖で、そこに口を開けた横穴があるのを見つけたハルキは、アイテムストレージからオブジェクト化した松明を左手に持ち、右手で背負っていたスモールソードを引き抜いた。そして息を整えると、意を決してその横穴に足を踏み込んだ。
……そして、その直後。
――グオオオオッッ!!!
前方の穴から突然飛び出してきたのは決して外部と自由に行き来しているプレイヤーではなく、棍棒を持った半裸の大型モンスター、「コボルドサージェント」だった。光の射さないこの横穴では、このモンスターの様な巨大な体躯は暗さに溶け込んでしまい極めて索敵がしにくい、ましてやまだ全プレイヤーの平均レベルが低い現状ではなおさらである。
そんな巧妙な不意打ちを仕掛けたコボルドサージェント……直訳して「コボルド軍曹」は身を翻すや否や、間髪入れずにその重厚感のある棍棒をハルキの脳天めがけて振り下ろした。
だが結果としてその攻撃は宙を切る事となった。ハルキは目の前にコボルド軍曹を認めた瞬間に、一気に加速して間合いを詰めていたのである。その結果、大きく太い棍棒では上手く捌けない程には懐に入ることに成功したのだ。
「ふっ!」
そして裂帛の気合を込めて、ハルキは手にした剣を左下から右上へと、居合斬りをする様に振りぬいた。その剣の軌跡は紛れもなく、彼が通常のフィールドで存在する「コボルドヘンチマン」相手にレベリングをしていた際に発見したコボルド共通の急所、人間でいう所の心臓部分を切り裂いていた。
たった一振り、ソードスキルも使わない一撃だったが、その斬撃はコボルド軍曹を大きく仰け反らせるには十分なものの様だった。大きな音を立てて、モンスターは後方に二、三歩よろけ、終いにはズシンと盛大に尻餅をついた。そのおかげでハルキは、コボルドの背後……隠しログアウトスポットと呼ばれたその場所に、本当は何があるかを垣間見ることが出来た。
「……やっぱり噂は噂だったって事だけど……」
結論から言えば、やはりログアウトの噂は嘘であったと言っていいだろう。そこにはそれらしき特有のオブジェクトが存在するでもなく、ただ目の前にいるコボルド軍曹が住み着いていたのであろう(正確にはその様な設定になっている)焚き火跡があるのみである。
だがそれとは別に新たな情報も存在した様だ。その焚き火の中央、まさに火を配る
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