狙った相手が悪かった
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軍曹に指示を出す。流石に上司には指示を出さなかった。
「……ああ、コイツ知ってる。殺し屋の……え〜と……首取り……マタンゴって名前だった様な気がする」
多分ウソだ……この人の記憶力はずば抜けている。
一度見聞きしたことを曖昧に憶えるはず無い。
「首刈り……マスター……だ!」
多分リュカ様に頭を動かされた時から意識が戻ってたのだろう。失礼な名前の間違いに、黙ってられず訂正する。このお二人も、それを解ってての茶番だろう。何だよ『首取りマタンゴ』って……殺し屋の名前にある訳無いだろう。
「あぁソウダッタ。腕のタトゥーは今まで刈り取ってきた首の数って話だよ」
「へ〜……じゃぁ、えーと5×10で50人の首を刈ったのか」
右腕だけを……ワザと右腕だけを見て数を数え納得するリュカ様。可哀想に……これから存分に馬鹿にされ続けるのだろう。
「左腕も見ろよ」
「左? あぁホントだ! あれでも、一個欠けてるよ。これじゃぁ左腕は49個しかドクロマークが無い。バランス悪くね?」
「50人、49人の都合99人しか刈ってないんだろ。察してやれよ」
「何だ。まだ二桁だったのか。中途半端だな。こんな中途半端な自称殺し屋の100人目のターゲットに選定された奴には同情を禁じ得ない」
「その同情を禁じ得ない奴がリュカさんだよ。解れよ(クスクス)」
「え? でも僕、首が繋がってるよ。あぁ物理的な意味だけど」
でしょうね。
「だからコイツはそこで縛り上げられてるんだろ! リュカさんの首が刈られてたら、今頃コイツの左腕には100個目のドクロが刻まれてるはずなんだよ」
「あぁ〜……そっかぁ〜……ゴメンね、空気読めず邪魔しちゃって。お詫びに僕が、100個目の場所にバランス良くなる様、ウ○コマークを描いてあげるよ」
そう言うとリュカ様は、もう一人の警備兵……タック少尉の腰からショートソードを抜き取り、刃の先端部分を掴み器用に男の腕に入れ墨を彫りだした。
「や、止めろこの野郎! ぶっ殺すぞ!!」
「ちょ……動かないで! 可愛くウン○が描けないでしょ!」
そう言うと我々に目配せをするリュカ様。
私は慌てて二人の兵士に指示を出し、男を押さえつけ傍に置いてある机に左腕を押し当て固定する。なお、天才宰相閣下は腹を抱えて笑っておられる。
「よし描けた」
そう言うとリュカ様はこの部屋の隅に蓄積されてる土埃を手に取り、刻んだばかりのあのマークに刷り込んで……「ホイミ」と傷口を塞いだ。
「どれどれ?」
笑っておられた宰相……天才宰相閣下が男に近付きマークを確認する。
そして「ぶはぁ!」と吹き出すと「色合いもバッチリですね(爆笑)」とリュカ様の作品を褒め称えた。
私も二人の兵士も、この男が哀れすぎて笑えない。
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