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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
恋篝 T
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自室を出る前だったろうか──不慣れな彼に浴衣を着付けてやっている幼馴染とで、たいそう仲良くしていたように記憶している。どうやら2人もウォルトランドの花火を見るらしく、白雪の性格を勘案して、人気の少ない葛西臨海公園で観察してみるという話だった。彼女が外出するのは珍しいね──とキンジに訊ねると、『俺が誘ってみた』という返事なのだから、少々面食らわされてしまったけれど。

自分とアリア、キンジと白雪でそれぞれ外出することに相成ったまでは良いものの、やはり《魔剣》の接触というものは危惧されていた。護衛が離散するこの機会を、果たして彼の者が如何様に捉えるのか──好機と見るか、まだ鳴りを潜めているか。前者であるとしても、瞬間的に現地へと《境界》で奇襲的援護を行えるこちらの利は大きい。そもそも今まで彼等2人きりの状況があったにも関わらず接触されなかったのは、まだ《魔剣》に不都合があるのだろう。しかし後者としても、油断はできないところだ。アドシアード開催日に接触される可能性が高いというだけで、その他には何も、根拠らしい根拠など、殆どと言っても良いくらい存在し得ないのだから。


「……なんだか、この1ヶ月で、色々と変わったね」


そう零し零し、覗いていた窓硝子から、視線をふいと例の赤紫色の瞳へと流し目する。アリアはそれに小さく頷くと、今度は伏せがちにして「きっと、アタシがいるからでしょ」と呟いた。
「アタシが彩斗のパートナーで、同居人で、友達だから。危ないことに首を突っ込ませちゃってたり、でも同じ部屋で家族みたいに過ごしたり、一緒に学校に行ったりしてる。こんな変な関係って、きっとアタシたちだけかもしれないけど。……ふふっ、良くも悪くもアタシのせい」
そう微笑しながら目を細めている彼女の面持ちは、どこか楽しそうで、物悲しそうだった。


「でも、これからが──」


そこまで言いかけて、自分は口を噤んだ。彼女との(・・)これから、或いは彼女()これから──似て非なる字面にふと思い至って、思わず羞恥に閉口させられてしまったのだ。単なる親友として見たアリアとのこれから、というのは、例の感情に照らしてみると、行き着く先はやはり、そういう関係なのだろうか。とかいう陳腐な思いごとをしては、勝手に黙りこくっていた。


「──ううん。やっぱり、なんでもない」


反面、パートナーとして見たアリアとのこれから、というのは、そんな恋愛みたく生易しい話で済ませられるようなことでは到底ありはしない。《武偵殺し》こと峰理子による一連の騒動は、表面的にこそ解決はしたものの、裡面ではまだ司法取引というこれ以上にない重大事が残されている。それに次いで《魔剣》なる者が巷で噂されているのは偶然ではなく、やはり理子と同様に《イ・ウー》に属しているのだと
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