第十九話 初詣その一
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第十九話 初詣
新年になった。希望は夜はずっとおばちゃん達と一緒だった。
三人でテレビを観ていた。紅白が終わり新年の挨拶をした後でだ。おばちゃんとぽぽちゃんはにこにことして希望にこう言ってきたのだった。
「ほなどうするんや?」
「今日は外に出るんか?」
「うん、住吉に行って来るよ」
住吉大社に行くことをだ。希望はおばちゃん達に笑顔で答えた。
「初日の出を見たららね」
「希望も初日の出見るんやな」
「そうするんやな」
「何か。それを見るのもね」
初日の出もだ。これまではだったのだ。
「はじめてだよ」
「そやったな。あの家はな」
「そんな家やったからな」
「お正月。全然楽しくなかったよ」
両親といてもそうだったとだ。希望はあの時のことを思い出して暗い顔になった。
「年越し蕎麦もなかったし」
それはおばちゃん達が作ってくれた。それを楽しみもした。
そしてだ。そのうえでだった。
「おせち料理作ってくれたんだよね」
「帰ったら出すで」
「楽しみにしときや」
「そんなのもなかったから」
希望の両親、この場合は母親はそんなものを作る人間ではなかった。むしろ正月になればだったのだ。
「遊びに行ってね。何もしなかったからね」
「お父さんもやろ」
「そうしたやろ」
「家にはいつも僕だけだったよ」
それが希望の今までの正月だったのだ。彼はいつも孤独な正月を送っていたのだ。
だがその中でもだ。一つ楽しいことがあった。その楽しいこととは。
「けれど。友井君がいてくれたからね」
「あの子とはいつも一緒やったね」
「今でもやね」
「だから。お家では寂しかったけれどね」
友達がいてくれた。このことは有り難かったというのだ。
「ずっと一緒だったからね」
「お正月。寂しかったけれど」
「楽しいこともあったんやね」
「そして今はね」
家を出ておばちゃん達と一緒にいて。
「凄く幸せだよ」
「そやったらもっと幸せになりや」
「正月からな」
「だからなんだね。ここに帰ったら」
住吉に参拝して。それからのことだった。
「おせち料理だよね」
「数の子も玉子焼きもあるでえ」
「他のも一杯あるさかいな」
「うん、全部楽しみにしてるからね」
「勿論お雑煮もあるで」
「希望の好きなもの全部あるからな」
「有り難うね。本当に僕このお家に来てよかったよ」
何処まで暖かいおばちゃん達のところに来て。そうだったというのだ。
「嫌なことは全然ないからね」
「あの家とちゃうさかいな、この家は」
「私等の家やからな」
「そうだよね。
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