暁 〜小説投稿サイト〜
探偵オペラ ミルキィホームズ 〜プリズム・メイズ〜
探偵事務所にて
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の差し出した腕に飛び乗った。
「こりゃあいいや、ワトスン! このお嬢さんは中々に素直だね」
「・・・何だよそれ。馬鹿にしてる?」
ネロが顔をしかめる。
「いやいや! −−あははっ! 怒鳴られた後に笑うと気分がいい! −−おっと。仕事に戻らなくちゃ。ありがとう、お嬢さん。お陰で気分が晴れたよ」
「−−役に立てたんならよかったよ」
そっけなく言うネロはしかし、アメの棒を持つのと反対の手に持っていたメモを、青年の前に突き出した。
「・・・?」
青年はまじまじと、そのメモに書かれた住所を覗き込む。
「・・・もしかして、王女殿下が言っていた”助手候補”とは君のことですか・・・?」
「そ」
ネロは、メモをくしゃりと丸めてポケットにしまい、右手を差し出した。
「僕はネロ・ユズリザキ。−−よろしく」
*
とぽぽぽ・・・、と、なんとものどかな音を立てて、ティーポットの中身が、カップの中に滑り落ちていく。
その芳香を前にしてーーネロはよだれを垂らさんばかりにしていた。
何せ、目の前には各種焼き菓子が山と積まれていて、客はネロひとり。つまりこれは、みんな食べていいってことだ・・・!
紅茶が注がれるのを待ちきれずに手を伸ばし、チョコとプレーンの生地で市松模様の作られたクッキーを一掴み、手に取り、口に頬張る。
甘〜い味と、ふんわりと漂う優しい香りと。
(か・・・、感激。)
ホームズ探偵学院でのつらい日々ーー野菜とパンの耳とラードーーを思い出し、噛み締め、−−クッキーを噛み味わう。
そしてそんなネロの前に、紅茶のカップがカタリと置かれ、砂糖とティースプーンまで手早く付いてーー完璧なお茶の時間の完成。
「王女殿下の探偵趣味にも困ったものだと思っていたけど、こんなに早く助手を見つけてくれるんならあのひとの手腕というのも大したものだ」
自分はコーヒーのカップを手にしてミルクを入れてかきまぜつつ、ウィルバー・キヅキと名乗った青年ーーこの探偵事務所の所長だーーは、小さくつぶやいた。
そのかきまぜる手を、カップを持ち上げる仕草を、ネロは菓子を食べる手を止めてじっと見ていた。
「にゃあ」
「・・・おっと。ワトスンにもミルクをあげなきゃね」
「全くだ。俺のミルクを忘れるなんてどうかしてるぜ、ぼうや」
「はいはい」
言いつつ青年はもたれていた机から移動し、冷蔵庫を開け、中から瓶入りの牛乳を取り出し、猫用らしい浅い皿に注いだ。
ーー 一連のそれらの動作をしばらく見ていたネロだが、−−ひとこと。
「ね、猫が喋った!?」
*
つまりそこは、ウィルバー探偵事務所というのだ。
表通りから三歩入って、十二段、踊り場で回って、さらに十
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