第十八話 クリスマスの光その十
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「それでね」
「だといいけれどね」
「それでだけれど」
「うん、何かな」
「このケーキを食べたらよね」
「そうだよ。それからね」
どうするかとだ。希望はここで赤ワインを飲んだ。ワインとケーキは合う。酒は甘いものは合わないというがそれはあくまで日本酒のことである。
ワインは違う。だから美味しく飲むこともできるし食べることができるのだ。ケーキとワインも。
その二つの組み合わせを楽しみながら。希望は話すのだった。
「イルミネーション行こうね」
「あそこにね」
「ずっとね。夢だったんだ」
「夢?」
「うん。誰か、女の子と一緒にあそこに行くことが」
そのささやかだが最高の幸せをだ。希望は今話すのだった。
「夢だったんだ」
「希望の夢だったんだね」
「本当にね。夢だと思っていたよ」
願望だけではなくだ。見果てぬものでもあったというのだ。
「僕なんかにそんな人はできないって」
「けれどできたよね」
「それ自体が夢みたいだよ」
夢は多かった。この場合は幾つもあった。
「もうね。何て言ったらいいかね」
「そうなの。けれどね」
「夢じゃないんだね」
「夢は見るものじゃないよ」
「適えるものなんだね」
「うん。だからね」
「そうだね。そういえば僕は」
千春とはじめて出会ったその時のことを思い出してだ。そのうえでの言葉だった。
「ずっと夢が。適えられていってるよ」
「そうだよ。夢はそういうものだよ」
「適うんだね」
「だからね。希望はね」
「うん、僕は」
「このまま行けばいいんだよ」
こう希望に言う千春だった。
「そうなんだよ」
「そうだよね。それじゃあね」
「夢、まだある?」
千春は希望のその目を黒く澄んだ目で見ながら問うた。
「希望の夢。まだある?」
「僕の夢?」
「うん。まだあるの?」
「将来はね」
その夢をだ。希望は今千春に話した。
「仕事はね」
「何がしたいの?」
「大学の先生になりたいんだ」
「学校の先生じゃなくて?」
「うん、高校とかじゃなくて」
大学のだ。それになりたいというのだ。
「僕国語が得意じゃない。だから」
「そういうのの先生になりたいの」
「古典とかね。源氏物語とか平家物語とか」
千春に教えたあの源氏物語も話に出してだった。
「そういうのを皆に教えられたらいいなって思ってるんだ」
「そうなんだ。希望大学の古典の先生になりたいんだ」
「これ。友井君には話したことがあるけれど」
「他の人にはなかったの」
「なかったよ」
真人の他にはだ。本当に千春に話したのがはじめてだったのだ。
「誰にも
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