第112話『先陣』
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「隙あり!」
「がっ!?」
刀を振り上げたその一瞬、ガラ空きになった腹に舞の翼撃が突き刺さる。殴られるのや蹴られるのとはまた違う、大きく重い一撃に、口から空気が洩れた。
「もう一発!」
「くっ……!」
続くもう一方の翼撃。苦しむ身体を叱咤し、何とか刀の腹で受け止める。が、その威力までは消し切れない。あえなく後ろに吹き飛ばされ、フィールド上を無様に転がる。
そんな様子の緋翼を見ながら、体勢を立て直した舞は再び宙へと舞い上がった。
「しまった……!」
せっかく掴んだチャンスだったのに、一方的に攻撃されるだけで終わってしまった。
地上ですら彼女に敵わないならば、一体どうすればいいというのだ。
──もう一度落とすか?
いや、二度目は通用しないだろう。舞は強い。この短時間で、実力差は思い知らされた。格上の相手に同じ技を使うのは愚策だ。
──では為す術なく、空を見上げ続けるのか?
そんなの嫌だ。自分が無力だなんて思いたくない。ここまで導いてくれた後輩たちに、示しがつかないから。
──なら残された手段は、
「……いいわよ。見せてやるわ、私の奥の手」
少し早いが、ここで切り札を切ることにする。
覚悟を決め、大きく息を吸いこんだ。身体中に酸素を行き渡らせ、滾る血を、情熱を、さらに燃やすように。
「な、何……?」
舞が狼狽えながら見つめる先、緋翼の背中から双対の焔が伸びた。ゆらゆらと燃え盛るそれらは、次第に数本の緋色の刀へと変貌し、翼を象っていく。
そして握っていた太刀もまた焔に巻かれ、その後彼女の体躯に見合う長さの双剣へと姿を変えた。
「えぇっ!? 何それ?!」
「──"武装・緋連雀"」
地上がダメなら、空中戦だ。
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