第112話『先陣』
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緋翼は辛うじて刀で打ち落とすが、あまりの威力に思わず後ずさった。
「羽根のくせに固くて重い……。当たるのはマズそうね」
ああやって投擲できて、しかも固い。まるでクナイのようだ。飛ぶ上に飛び道具だなんて、刀ではますます不利である。加えて、
「再生するなんてズルくない?」
舞の翼の羽根を失った部分はもう再生していた。つまり、あの武器は彼女の魔力が尽きるまでずっと存在するということだろう。
「まだまだ行くよー!」
「あーもう煩わしい!」
際限なく降ってくる羽根の雨。防げない程ではないが、このまま遠距離で戦っても埒が明かない。
痺れを切らした緋翼は、羽根の猛攻の合間を見計らって踏み込み、ジャンプして舞に接近を試みる。
早速終夜の作戦を破ったが、案外近づけばどうにかなるのではないかと思った故の特攻だ。
「いらっしゃーい」
「がふっ!?」
だがさすがにそれは淡い幻想だったようで、刀が届く前に翼で叩き落とされてしまった。
まるで巨人になぎ払われたかのような衝撃に耐えつつ、着地だけはきちんと行なう。
「やっぱりダメか……。空中じゃ小回りも利かないし」
それもあるだろうが、彼女の作戦は羽根を飛ばして相手を牽制し、向かってくるなら迎撃するというシンプルなものだ。つまり、今完全に彼女の策略に嵌ってしまっている。
であれば、突破口は別の切り口にあるはず。
「近づいても押し負けて、焔は避けられる。やっぱり私の能力は相性が悪そうね」
そう現状を再確認したならば、次は攻略法を考える。
遠距離で、かつ相手に避けられないくらいの速度の攻撃。生憎そんな技は持ち合わせていないので、即興で組み合わせてみよう。名付けて、
「──"居合い・陽炎の太刀"」
「熱っ!?」
居合い切りの要領で刀を素早く抜くと、刀身が大きな焔へと変化し、舞に襲いかかる。
初見というのも相まって、さすがに彼女も反応できずに直撃した。ダメージがそれなりに入ったようで、よろよろと地上に降りて来る。
「何今の!? 凄い熱かった! ふーっ、ふーっ」
「落ちたわね!」
腕輪の仕様で実際に火傷などはしてないとはいえ、熱いという感覚は残る。それに舞が慌てている隙に、緋翼は一気に距離を詰めた。
「ふっ!」
「危なっ!?」
「この……!」
遠慮なく袈裟斬りにしようとしたが、それでも舞はしっかりと見切って避けてくる。
その後も上から下から横からと連続で刀を振るうも、全てかわされてしまった。
これは……飛ぶ飛ばない以前の問題かもしれない。
「ちょこまかと……!」
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