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おぢばにおかえり
第六十六話 好き嫌いその三十

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「というか前にお会いしてますよ」
「前にって?」
「ですから僕の入学式の前に」
「同じ奥華だから?」
「そうですよ」
「それはあるかも知れないけれど」
 大教会や詰所ではよく人が集まります、それならです。
「けれど私覚えてないわよ」
「そうですか?」
「ええ、擦れ違った可能性はあるけれど」
 その可能性は高いとは思います、何しろ同じ大教会なので。
「おぢばはふしぎやしきだしね」
「思わぬ出会いがいつもありますね」
「本当に奇跡みたいな出会いがね」
 おぢばにおいてはです。
「いつもあるから」
「それで、ですよ」
「私と阿波野君がなの」
「お会いしてるんですよ」
「そうなのね、けれどね」
 そう言われてもです。
「私は覚えてないっていうか」
「気付かれてないですか」
「悪いけれどね」 
 本当に記憶にありません。
「阿波野君とは高校時代まで会った記憶がないわ」
「そうですか、まあそれは置いておいて」
「いいのね」
「先輩と今お会いしていますから」
「大事なのは今ね」
「はい、こうした考えでいいですよね」
「過去は変えられないけれど認識は変えられるでしょ」
 これも私の考えです。
「だからね、大事なことはね」
「これからですね」
「そう、だからね」
「僕もですね」
「そのことを踏まえて」 
 そうしてと阿波野君にお話しました。
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