第十八話 クリスマスの光その七
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「その時はね」
「それで見つけてくれて」
「また一緒にいるから」
「そうしてくれるのね」
「最初から離さないけれどね」
希望もその千春を見て笑顔になる。その手で彼女の手を握りながら。
「絶対にね」
「雷、本当に落ちて欲しくないよ」
希望が離すことはないと受けての言葉だった。
「だって。雷だけは逃げられないからね」
「他のことはどうなっても」
「それはどうにもならないからね」
これが千春の希望への今の言葉だった。
「雷は」
「まあ。雷の落ちる日は外に出ないことかな」
希望はまただった。彼の、人間としての考えの範疇から千春に話した。
「そういう日はね」
「そうできたらいいよね」
「いや、本当にそうした日はお家にいればいいから」
また言う希望だった。
「そう思うけれど」
「そうできたらいいね」
千春は少し暗い顔のままで言った。だがそんな話をしている間にだ。
希望と彼女はまたあの店に来た。そのうえで予約していたテーブルに向かい合って座った。それからすぐにだ。希望はあの大学生のウェイトレス、この店の娘さんにこう言った。
「あの、予約していたメニューに」
「はい、それにですか」
「キャンドルありますか?」
「キャンドルですか?」
「それはありますか?」
こうそのウェイトレスさんに尋ねたのである。
「あればこの席に持って来て欲しいのですが」
「いえ、それは」
「ないですか」
「はい、うちの店にキャンドルはありません」
そうだというのだ。
「その代わりに。クリスマスですから」
「だからですか」
「サンタクロースの人形とツリーの模型があります」
見れば店の中、扉のすぐ傍に人、大人の男の背丈程の大きさのツリーが置かれている。やはりそれも様々なもの、ツリーを飾るもので飾られている。
そのツリーの他にもだ。模型もあるというのだ。
「どちらが宜しいでしょうか」
「どっちがいいかな」
ここまで話を聞いてだ。希望は千春に顔を向けて尋ねた。
「サンタさんかツリーか」
「ツリーにしよう」
千春がいいと言ったのはそちらだった。ツリーの方だった。
「それにしよう」
「うん、ツリーだね」
「それにしようね」
こう言うのだった。
「ツリーってモミの木だからね」
「モミの木好きなんだ」
「千春のお友達だから」
モミの木がそうだというのだ。
「だからね。好きだよ」
「ふうん。モミの木がお友達なんだ」
それを聞いてまただった。希望は首を捻った。そのうえでの言葉だった。
「そうだったんだ」
「うん、そうだよ」
「だからそのモミの木をなんだ」
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