第十七話 冬の入り口その十
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「忠告しておくわよ。もう彼のことは言わないで見ているだけにしておくのね」
「じゃあそれって負けじゃない」
「私達が人を見る目がなくて悪いことをした奴等って認めるだけじゃない」
「そうよ。それが今のあんた達よ」
二人を見ていた。冷たい目で。
「もうそうなってるのよ。今のあんた達はね。人を見る目がなくて底意地の悪い連中なのよ。で、今あんた達に声をかける子なんて誰もいないでしょ」
「それは」
「そのことは」
「誰もね。性格ブスに声はかけないの」
今度はこう二人に言った。
「そういうことなのよ」
「性格ブスね」
「私達が」
「皆に聞いてみたら?」
またしても冷たい目での言葉だった。
「答えてくれるかどうかわからないけれどね」
「うっ・・・・・・」
「それは・・・・・・」
「本当にね。私もね」
その彼女もだ。苦い顔になって自分自身について言う。
「わからなかったわよ。遠井君のことも」
「あいつのことも?」
「他には何よ」
「何かあんた自分も責めてるけれど」
「何を責めてるのよ」
「人のことがわからなかったわ」
自分もそうだというのだ。野田や永田、今自分が批判している二人と同じだというのだ。
「人って外見じゃないのよ。学校の成績でもわからないのよ」
「性格?」
「それ?」
「遠井君は元々性格はよかったのよ」
これもだ。彼女が今になってわかったことだった。
「そしてあの娘はそのことに最初から気付いてたのよ」
「だから私達が何を言ってもあいつから離れなかった」
「そうだっていうのね」
「そういうことになるわね」
こう言う彼女だった。
「つまりあの娘もそれだけ心が奇麗なのよ」
「私達と違って、っていうのね」
「性格ブスじゃないっていうのね」
「言うなら性格美人ね」
それが千春だというのだ。
「あの娘はね」
「で、私達にはもう言うな」
「そう言うのね」
「さもないと本当にもっと女を下げるわよ」
またこの忠告をするのだった。
「それでもいいんなら構わないけれどね、私は」
そしてだ。再び冷たい目になって二人に告げたのだった。その告げた言葉は。
「私もあんた達嫌いだし。性格悪いってわかったから」
「・・・・・・・・・」
「じゃあいいわね。忠告はしたわよ」
完全に他人への言葉だった。
「これ以上女を下げないことね」
「・・・・・・・・・」
二人は彼女の言葉に忌々しげに俯くだけだった。最早そういうことしかできなかった。もう希望にも千春にも何も言う者はいなくなっていた。そのうえでだった。
希望はだ。千春に笑顔でこう言うのだった。
「それ
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