第12節「唄えぬ理由はどこにある?」
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『ふらわー』のおばちゃんだ。
そして、響と未来はそのふらわーへと向かう最中であった。
「翔くんに言われた事、気にしてるの?」
「気にしてない、って言ったら嘘になるかな……」
響の心境を表しているかのような曇天。
今にも雨が降り出しそうな空は、響の表情により一層陰を落としていた。
「翔くんなりに、わたしの事を心配してくれての言葉だとは思うんだけどね……。あんな言い方されちゃうと、わたしに求められていたのはガングニールを纏って戦う力だけで、人助けがしたいっていうわたし自身の想いの方はどうでもよかったんじゃないかって……そんな風に考えちゃって」
「響……」
「ダメだよね、わたし。翔くんはそんな人じゃないって、分かってるのに……」
そう呟くと、響はまた俯いた。
「わたしね……ひょっとしたら、翔くんに甘え過ぎてたのかもしれない」
「甘え過ぎ……?」
「うん……翔くんなら、わたしの言う事は何でも受け容れてくれる。どんなに無茶な事言っても、何だかんだ言って肩をもってくれるって……」
未来はこれまでの翔を振り返る。
確かに、翔はなんかんだで響に甘い。時に厳しい事も言うが、それは常に響のためを思っての言葉だった。
そして、常に響のやりたい事を尊重し、ダメな所はダメだとハッキリ言いつつ、折衷案で上手いこと舵取りしていた。
今回のように、全面から否定したのは初めての事だ。
「だから、ショックだったんだと思う。今回も翔くんなら、わたしの味方になってくれるんじゃないかって。……奏さんやマリアさんの言ってることは、きっと間違ってないのにね……」
「響はどう思ってるの?シンフォギア、辞めたいの?」
親友の口から、改めて投げかけられた問いかけ。
突然だった昨日と違い、今日は散々悩んだ後だ。響は暫く考えて、それから口を開いた。
「辞めたいと思った事は、全然無いんだ。不思議だよね、あんなに怖い思いもしたし、痛い思いもしたのに……辛かった気持ちよりも、この手を誰かに伸ばせた時の温かい気持ちの方が、ずっと強いんだ……」
「そっか……。じゃあ、やっぱりシンフォギアを纏う事は、響にとって一番やりたい事なんだね」
「うん……」
しかし、肯定の言葉と裏腹に、響の表情は重たいままだ。
「やっぱりまだ、唄うのは怖いの?」
「う……うん。誰かを傷つけちゃうんじゃないかって思うと……ね……」
誰かを傷つけてしまうことを、立花響は極端に厭う。
その性質は1年前から全く変わっておらず、事件に巻き込まれる度、随所で発揮されてきた。
ある時は甘さだと吐き捨てられ、ある時は偽善と罵られた。
極端な潔癖思想とでも言うべきそれは、彼女の運命の転機となった3年前の事件、ライブ会場の惨劇がきっかけと言える。
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