第12節「唄えぬ理由はどこにある?」
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希望が込められていたのかもしれない。
「だから、翔も伝えてみたらいいんじゃないかな。響さんと同じように、歌を通じて、手を繋ぐ方法で」
「歌で手を繋ぐ……か」
俺に出来るだろうか?
言葉にしていないが、そんな不安を滲ませる親友に、純は背中を押すための言葉を贈る。
「翔ならきっと出来るさ。だって……君は立花さんの王子様なんだから」
(そうだった……俺が伴装者になったのは、響を守りたいからだ。響の人助けを支えたくて、俺はこの力を手に入れたんだ!)
曇りなき瞳で、淀まずかけられた言葉。
それは翔の心を、己の原点へと立ち返らせるに十分であった。
「男なら、どんな逆境も諦めない。そうだろう?」
「ああ!お陰でバッチリ目が覚めた」
「それはよかった。なら、どうするべきかは分かるよね?」
「未来さん、今、立花さんとふらわーに向かってるんだって」
「おっ、丁度いいじゃねぇか。謝るついでに、超絶美味ぇお好み焼き食って仲直りできる。完璧じゃねぇか!」
「そうと決まれば善は急げだ。翔、行ってこい!」
「グッドラック。応援してるよ」
親友達のエールを受けて、翔は席を立つ。
「皆、ありがとう。俺、行ってくる!」
教室を出ていく翔を見送る友人たち。
翔の背中が見えなくなると、紅介は冷やかすように笑う。
「『立花さんの王子様なんだから』なんてクサい言葉、よくスルッと出てくるな〜」
「悲しみや苦しみも分かち合い、抱え込まずに相手へ捧げる。それが本当の王子様だからね」
「かーっ、ホンットかっこいいヤツだなお前!冷やかしたこっちがかっこ悪くなるじゃねぇか!羨ましいわ!!」
「逆に紅介はもう少し落ち着きと節度が必要なんじゃないかな……」
「んだよ恭一郎、俺は俺だろー!ありのままの俺を受け止めてくれる人が、いつか見つかるかもしれねぇだろ!」
「あはは……いつか見つかるといいね、そういう人」
未だ春の来ない熱血野郎、紅介。彼の悔しさ溢れるシャウトに苦笑しながら、純は窓の外を見つめる。今日は朝から曇り空。そろそろ雨が降ってもおかしくない。
そういえば、傘は持ってきていただろうか?
忘れてはいないはずだが、念の為自分の鞄の中を確認する純であった。
「豚玉、ミックス、タピオカあんこの生クリームたっぷり……兄さん、お腹空いてない?」
「流星、最後のそれは本当にお好み焼きなのか……?」
ff
一方その頃、都内の旧リディアン音楽院付近……通称、特別指定封鎖区域と呼ばれる区画の近くに存在する商店街。
1年前のルナアタックまでは、学生達の溜まり場として活気に満ちていたその地域は、今ではすっかり寂れている。
殆どの住民が立ち退いた中、変わらずそこで店を続けているのが、お好み焼き屋
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