第12節「唄えぬ理由はどこにある?」
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
令所を見回すが、響は来ていない。
するとクリスと弦十郎が、言いにくそうに切り出した。
「あー……響は今日、ちょっとな……」
「響くんには、メンタルのケアが必要だったからな。翔も少し頭を冷やしたいらしい」
昨日、それぞれ本人や未来を経由して事情を聞かされた2人は、複雑な面持ちで溜め息をついた。
ff
「──なるほど。だから今日の2人はよそよそしかったんだね」
「翔と立花さんが一度も喋らないなんて、よっぽどだよね……」
「なーんか距離あるなと思ってたら、夫婦喧嘩で別居中かよ」
「紅介、それ今シャレにならない」
「悪ぃ、今の忘れてくれ」
教室の角では、純といつもの4人が、翔を囲むように集まっていた。
「本当に、あんな言い方をする気はなかったんだ……。ただ、これ以上響に傷ついて欲しくなくて……」
「葛藤の末に出た言葉が、立花さんを傷つけてしまった。本当に言いたい言葉は、喉でつっかえて言えなかった。そういう事なんだよね?」
「本当に、俺はなんてことを……。響にどう謝れば……」
机に肘をつき、落ち込む翔。
恭一郎や飛鳥らは、かける言葉が浮かばず顔を見合わせる。
「今思うと、怖かったんだ……。このままだと、響は“普通の女の子”で居られなくなってしまう気がして……俺が引き戻さなきゃって、強く感じたんだ。引き戻すチャンスは今しかない、ってさ……」
「翔……下向いたままなんて、君らしくないぞ」
純はそう言って、翔の視線を上げさせる。
顔を上げた彼の視界には、いつだって余裕を崩さない親友の顔があった。
「大切だからこそ、言えなくなっちゃう言葉もあるよ。大き過ぎる想いの全てを紡ぐには、言葉じゃ足りないくらいだもの」
「言葉じゃ足りない……?」
「そう。だから人類は、想いを旋律に乗せて伝える事が出来る“歌”を生み出したんだ」
それはかつて、フィーネが語った先史文明期の歴史にも触れる言葉だった。
研究によれば、世界で初めて音楽が成立した時期は今以て定かでなく、中でも“歌”の歴史は楽器が生まれるよりも古い。一説によれば、その由来は旧石器時代にまで遡ると言われている。
そして、かつてフィーネの口から語られた統一言語とその喪失。
それらを併せると、朧気ながらに見えてくる事実がある。
『歌は統一言語を失った人類が生み出したものである』
いつの時代も不足、喪失こそが人類をより豊かに発展させるきっかけとなってきた。
統一言語は過不足なく正確に、人々に互いの意志を伝える事が出来たらしい。それが失われた時、人類はきっと混乱したはずだ。
だから歌が生まれた。そして、歌には無限の力が宿っていた。
フィーネがシンフォギアに『歌』を力とするコンセプトを付与したのは、もしかすると彼女の
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ