壱ノ巻
由良の縁談
4★
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だけるのです」
「…わかった。この話はあたしの心の中に閉まっておくから。でもそのかわり!条件があるの」
「なんでしょう」
「出口、どこ」
「…はい?」
「だからっ!天地城から出るにはどうすればいいか聞いてるの!」
「つまり…どういうことですか?」
「つまり、迷った、ってコトよ!」
「迷った?この、天地城で?」
「そうよ」
「では、ここにいたのは…」
「迷いこんだのよ、ここに!あたしだって聞きたくて盗み聞きしてたんじゃないんだから」
そういうと、男はふっと噴出した。
…失礼なヤツね。何笑ってんのよ。
横目で睨みつけると、男は笑いながらあたしを宥めるように片手を挙げた。
「いや、失礼。貴女は普通の姫とは違いますね」
「悪かったわね、普通の姫じゃなくて」
「いえ大いに結構。ただ大人しいだけの姫より、よほど頼りがいがあっていいですよ」
それは褒めてるのか貶されてるのか。
「で、出口まで案内してくれるの?くれないの?」
「案内します。ついてきてください」
男が颯爽と歩き出した。
「何であたしのこと、姫って呼ぶの?あたし、名乗ってないわよね?」
「着ている物を見れば一目瞭然ですよ」
あ、そっか。
あたしは前を歩く男の背を見つめた。
…別に、悪い人、には見えないわ。
墨をすったようなとろりとした光沢を放つ髪。歩くたびにさらリさらりと揺れる様は女のあたしでもうらやましいくらい。その顔は…素直に認めますこれ以上ないくらいの美丈夫よ。魅力的なのはきりりとした眉かな…。
どっちかっていうと、気品があって、きているものはアレだけど、顔も別にいやらしい感じとかじゃないし。身分が高い人、かしら?
でも、一体誰なんだろう。
自分はさっき話していたものの仲間ではないと言っていた。仲間じゃないとしたら、何よ。
「あんたさぁ」
「はい。何ですか?」
ほら。ちゃんと敬語使ってあたしと話してる。女だから、って馬鹿にしたりしない。
うん。いいひとね。
我ながら単純だけど、人を見る目はあるつもりよ。
「あんた亦柾って知ってる?」
「亦柾…徳川亦柾ですか。知っていますよ」
「あんた、そいつに似てるわ」
どこどこが
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