壱ノ巻
由良の縁談
4★
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………………。
「そうですか。聞かれましたか」
男は小さくため息をついた。
「立てますか、姫。とりあえずここから出ましょう。音は立てないように歩いてくださいね」
「あたしを殺すの?」
部屋から離れ、男の手が外れた途端にあたしはそう聞いた。
「いいえ。でもさっき聞いたことは忘れてもらいます。他言はされないように」
強い調子で男が言う。
「なんでよ」
「強情な姫ですね。なんでも、です。約束してください。今日聞かれたことは忘れてくださいますね」
そうはいくもんですか。高彬の名前が出てきたんだから、気になってしょうがないわ。
しかも、目障りときたらいくらあたしでも、聞いて聞かぬふりは出来ないわ。
男が、返事をしないあたしをじっと見る。
なによ。そんな睨まれたってあたし怖くないんだから。
あたしはじっと睨み返した。
暫く、無言の争いが続く。
先に音を上げたのは、男のほうだった。
「どうしても、忘れてはくださいませんか。それなら天地城から帰す訳にはいきませんね。今あなたにいろいろ騒がれると私たちの苦労が全て無になる」
「…あたし、誰にも言わないわ。それで気が済むんなら、もう帰っていいかしら」
「姫。私は、忘れてくださいといってるのですよ」
「誰にも言わない、っていってるでしょ?同じことよ」
「どうしてそう駄々をこねられるのか。関わればあなたの身も危険に晒されることになるのですよ。関係のない話に好奇心だけで首を突っ込むのは自殺行為です」
「関係なくないわよ!だってあいつら、佐々家って…あ」
あたしは思わず手で口を覆った。
この男の素性も知れないのに、迂闊に不味いこと言っちゃったかも…。
「佐々家、…ですか。では姫は佐々の者なのですか」
ああああああ、まずいまずいまずい…。
「ううん、違うわ!」
とりあえず否定したけど、後の祭り。
でも実際あたし、ホントに佐々の者じゃないし!
男は溜息をついた。
「言っておきますが姫、私はさっき話していたものの仲間ではありません。そこは誤解しないでいただきたい」
「そんなこと言われたって信じるわけないでしょ」
「それはそうですが。姫、どうしたらわかっていた
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