壱ノ巻
由良の縁談
4★
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
せーのっ!
「ここは、一体、何処なのよーーーーーーーっ!?」
部屋を飛び出したところまではよかったものの、てっきり外で待っててくれると思った高彬はいないし。
あたし一人で、こんなところから帰れる訳無いじゃないのーっ!天地城なんてめったに来ないんだし!
迷いに迷ってうろうろしてたあたしは、いつのまにか入り組んだ部屋の一角に迷い込んでしまった。
もう!このまま天地城から出られなかったら、怨んでやるんだからね、高彬!
昼間なのに暗い部屋。奥のほうは、光も届かず本当に夜のよう。どうやらここは、天地城の中でも奥のほうの部屋になるらしい。質素で、調度品とかひとつも置いてないところを見ると、この部屋は普段使われていないのかしら。
なんか、気味悪い。お化けでも出そう。耳をすませば、微かにイザナミのイザナギを怨む声が聞こえてきそうなーーーー…。
『…………佐々家がーーーーーー…』
え。
イザナミの声でもなかったし、人を怨み呪う声でもなかったけど、なんか、今、聞こえたわよね。
佐々家が、って聞こえなかった?
あたしは注意深く回りを見た。
どうやら、襖一枚隔てた隣で誰か話しているらしい。
あたしはそっと襖ににじり寄って聞き耳を立てた。
『やはり、あいつだな』
はっきりと声が聞こえる。
『ああ。佐々忠政の末の…佐々高彬。あやつは…目障りだ』
は!?高彬って言った!?
『あいつが、若殿に一番忠誠を誓っている。…だが、今回のことに直接的な差障りは無かろう、永田どの』
『まぁ、それもそうだが…。手筈は進んでいるのか』
『ああ』
『目障りだが消せもしないとは…全く面倒な存在よ』
そのとき、いきなりあたしのお腹に誰かの力強い腕が回った。
思わず、悲鳴が口から漏れる。
「ひ、…っふ!」
でもそれは大きな手によって、遮られた。
「し…姫、ここで一体何を?」
耳元で囁かれる。
やけに色っぽい低めの男の声。
嫌な汗が背中を伝う。
……だれ。
男の手の下で呟くと、唇の動きからあたしが何を言ったかわかったらしい。男がふっと笑う気配が伝わる。顔が見えなくて、それがどういう種類の笑みかわからずあたしは体を強張らせる。
「姫、もしや今の話を聞かれましたか?」
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ