暁 〜小説投稿サイト〜
戦国御伽草子
壱ノ巻
由良の縁談
4★
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 せーのっ!



「ここは、一体、何処なのよーーーーーーーっ!?」



 部屋を飛び出したところまではよかったものの、てっきり外で待っててくれると思った高彬(たかあきら)はいないし。



 あたし一人で、こんなところから帰れる訳無いじゃないのーっ!天地城なんてめったに来ないんだし!



 迷いに迷ってうろうろしてたあたしは、いつのまにか入り組んだ部屋の一角に迷い込んでしまった。



 もう!このまま天地城から出られなかったら、怨んでやるんだからね、高彬!



 昼間なのに暗い部屋。奥のほうは、光も届かず本当に夜のよう。どうやらここは、天地城の中でも奥のほうの部屋になるらしい。質素で、調度品とかひとつも置いてないところを見ると、この部屋は普段使われていないのかしら。



 なんか、気味悪い。お化けでも出そう。耳をすませば、微かにイザナミのイザナギを怨む声が聞こえてきそうなーーーー…。



『…………佐々家がーーーーーー…』



 え。



 イザナミの声でもなかったし、人を怨み呪う声でもなかったけど、なんか、今、聞こえたわよね。



 佐々家が、って聞こえなかった?



 あたしは注意深く回りを見た。



 どうやら、襖一枚隔てた隣で誰か話しているらしい。



 あたしはそっと襖ににじり寄って聞き耳を立てた。



『やはり、あいつだな』



 はっきりと声が聞こえる。



『ああ。佐々忠政(さっさただまさ)の末の…佐々高彬。あやつは…目障りだ』



 は!?高彬って言った!?



『あいつが、若殿に一番忠誠を誓っている。…だが、今回のことに直接的な差障(さしさわ)りは無かろう、永田(ながた)どの』



『まぁ、それもそうだが…。手筈は進んでいるのか』



『ああ』



『目障りだが消せもしないとは…全く面倒な存在よ』



 そのとき、いきなりあたしのお腹に誰かの力強い腕が回った。



 思わず、悲鳴が口から漏れる。



「ひ、…っふ!」



 でもそれは大きな手によって、遮られた。



「し…姫、ここで一体何を?」



 耳元で囁かれる。



 やけに色っぽい低めの男の声。



 嫌な汗が背中を伝う。



 ……だれ。



 男の手の下で呟くと、唇の動きからあたしが何を言ったかわかったらしい。男がふっと笑う気配が伝わる。顔が見えなくて、それがどういう種類の笑みかわからずあたしは体を強張らせる。



「姫、もしや今の話を聞かれましたか?」
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