第五章
[8]前話
「母は住職でもあり」
「この家の奥さんでお母さんでもあるんですね」
「そうです」
「そういうことですね、わかりました」
「俺もです」
藤原に続いて荒木も若い僧侶に話した。
「いや、今まで住職さんのそうした一面は知りませんでした」
「世俗のことはですね」
「全く。ですがそちらの住職さんにもこれからは」
是非にという言葉だった。
「お話を聞かせて頂きます」
「そうして頂けますか」
「是非」
こう若い僧侶に答えた、そうしてだった。
二人は彼から家庭での住職についてさらに聞いた、その時に若い僧侶の名前が丈彦といって法名は青光ということも聞いた。
二人は話が終わると寺を後にした、そして荒木は帰り道に藤原に言った。
「いや、まさかな」
「住職さんに家庭があってか」
「それでな」
こう藤原に話した。
「お子さんやお孫さんがおられて」
「母親として優しかったりな」
「お祖母さんとして甘かったりな」
「そんな面があったなんてな」
それはというのだ。
「本当にな」
「思わなかったんだな」
「ああ」
実際にというのだ。
「だからお話を聞いても今もな」
「それでもだよな」
「お前も信じられないか」
「あの住職さんにそうした面があるとかな」
「そうだよな、しかしな」
それでもとだ、荒木は藤原に話した。
「やっぱり人間だと色々な面があってな」
「住職さんとしての顔とか」
「奥さん、お母さんそしてお祖母さんのな」
「顔もあるんだな」
「そうだろうな、俺達だって色々あるしな」
「人間だったらか」
「色々あるんだ、それじゃあな」
それならとだ、荒木はさらに話した。
「これからは住職さんのそうした一面もな」
「見ていくか」
「そうしていくか、そうした一面も悪いしな」
「むしろいいよな、いい奥さんでお母さんお祖母さんならな」
「そうだな、じゃあな」
「これからもな」
「あの素晴らしい人見てお話聞いて学ぼうな」
藤原に笑顔で言った、そうしてだった。
荒木は藤原と共にこの日からも寺に参って住職と会った、そのうえで彼女から仏門や人の生き方の話を聞き。
妻として母として祖母としての彼女も見た。家事をしたり掃除をしたり孫と遊んでいる彼女を見ることもあった。その姿は確かに仏門の彼女とは違っていた。だがその時の彼女も素晴らしかった。それで二人はその時の彼女からも多くのことを学んだ。その為この寺に何度も参った。それは二人が高校を卒業してからも続いた。そして二人は住職との出会いや話を人生の貴重な財産の一つにしたのだった。
女性の住職 完
2021・5・12
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