第三章
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「凄かったな」
「ああ、まさにお坊さんだよな」
「澄み切っていて穏やかでな」
「ああした人っているんだな」
「穏やかで知的で」
「それで博識でな」
「思っていた以上にな」
荒木は言った。
「凄い人だったな」
「全くだな」
こう話した、二人共見送りは断って帰った、そして。
またこの寺に来ようと話した、その後で。
二人は何度も寺を訪れて住職の話を聞いて感銘を受けた、二人の中で住職はまさに最高の僧侶であった。
それでこの時も寺に来たが。
この時寺の境内で大勢の子供達が遊んでいた、荒木はそれを見て言った。
「寺で遊ぶ子供もいるんだな」
「そこは神社と同じだな」
藤原もその子供達を見て話した。
「そうなんだな」
「そうだな、けれどな」
「けれど。どうした」
「いや、どの子も随分馴染んでるな」
この寺にというのだ。
「まるで家みたいにな」
「遊び場どころかか」
「もっとな」
「そういえばそうだな」
藤原は荒木の言葉を聞いて子供達をあらためて見て述べた。
「言われてみれば」
「そうだよな」
「まるで全部知ってるみたいな」
「毎日遊ぶどころかここに住んでいるみたいな」
「そうだな」
二人でその子供達を見ながら話した、そうして本堂に入ると。
男の若い僧侶が出て来た、長身で髪の毛を七三分けにしている、二人は住職ではなく男の僧侶が出て来て言ってきた。
「住職、いえ母は今は」
「お母さんっていいますと」
「はい、この寺は今は母が住職をしています」
若い僧侶は荒木に答えた。
「そうしています」
「そうなんですか」
「そうです、父と共に」
「えっ、お父さんって」
「父も住職ですが今は本山の要職にあるのであまりこの寺にいないのです」
荒木に話した。
「そして母がいない時は跡継ぎの私がです」
「お寺におられるんですか」
「留守番として」
「そうなんですか」
「あの、住職さんご家族おられたんですか」
今度は藤原が言った。
「そうだったんですね」
「そうです」
若い僧侶は藤原の問いに答えた。
「それで私が息子で」
「そうなんですか、あの」
藤原はそういえば今は僧侶も家庭を持てることを思い出して頷いた、ただし浄土真宗は開祖親鸞以来そうである。
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