ラプラス
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「え?」
可奈美は、唖然とした声を上げた。
ただ、周囲の景色が変わったことは間違いない。夕方に近い空は一転して真っ暗になり、冬の乾燥した空気は、一気に氷の中にいるようにさえ錯覚するほどに冷めている。
「どこ? ここ……?」
建造物そのものは、それまで可奈美たちがいた神社と同一の造形。むしろ同じ場所だと言われた方が納得できる。この場所に朝が訪れれば、さっきまでいた場所と全く同じだと理解できるだろう。
社の外が、暗黒が広がっていることを除けば。
「どうなっているんですか……?」
可奈美と同じく、清香もまたいきなりの環境の変化に戸惑っていた。
だが唯一。コヒメだけは、その表情に曇りがない。
「ここ……」
「コヒメ?」
コヒメの様子に気付いた美炎が声をかける。
だが、コヒメはそれよりも先に駆け出していた。
階段を駆け上がり、一足先に境内へ入っていく。
「コヒメ!」
「ほのちゃん!?」
「美炎ちゃん!? 待って!」
コヒメのすぐあとを美炎、さらにその後に続く可奈美と清香。
すぐに、美炎の後ろ姿が目に入った。
彼女は、コヒメの両肩に手を乗せており、ともに神社の全体を見つめている。
「あれ? ここ、こんな神社だったっけ?」
見滝原に半年近く住んでいて、この場所に来たこともないわけではない。だが、可奈美の記憶にあるこの場所と、今目の前に広がっている神社の景色があまりにも違う。
まず、ここはこれほど大きな敷地などなかった。社の先には本陣だけだったし、ここに見えるような巨大な神木も存在しなかった。
「美炎ちゃん」
「ああ、可奈美」
美炎は、コヒメから手を離すことなく振り向いた。
「ここ、どこ? さっきまでいた見滝原には見えないんだけど」
「うん。私も……」
可奈美は頷きながら、来た道を振り返る。
心配そうな顔をしている清香の他にも、ココアとチノも同じ道を歩いてきたはずなのに、その姿が全く見られない。
「ねえ、可奈美……」
美炎は、神社を静かに見渡した。
「ここ、なんかおかしくない?」
「おかしい?」
「うん。ほら、わたしの実家って神社だから、ついつい見比べちゃうんだけど……」
その言葉に、可奈美は違和感に気付いた。
「そういえば、この神社……」
「何か……寂れてる?」
清香もまた、その意見に同意した。
人が出入りした気配が全くない社。
社から階段を昇って入ったはずなのに、やはりここからも社の外には町の景色がなかった。
「もしかしてここって……」
肌を突き刺す、薄暗い空気。この、普通の空気とは全く異なるそれを、可奈美、美炎、清香は肌で理解していた。
「|隠
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ