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SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第二章 〜罪と罰〜
その十二
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があるのか?」

 楓を追いかけることもせずに。

「お前が言うか!」

「飛び掛って来たのはお前の方だろう? 自業自得だ」

「ぐ……」

 確かに。楓の事が心配なら柳哉の事など無視して楓の後を追えばいい。まあその場合は柳哉が力ずくで引き止めていたが。

「……で、行かないのか?」

「……後で詳しく聞かせてもらうからな!」

 そう言って稟は芙蓉家を出て行った。故に稟は気づかなかった。

「後は頼むぞ、稟、桜」

 柳哉のその言葉に。


          *     *     *     *     *     *


 時間は少し戻る。
 桜は自室で携帯電話を手に、昨日の事とこれから起こる事について考えていた。

(本当に大丈夫なのかな……)

 昨日、亜沙と共に柳哉から聞いた“対処法”。それは下手をすれば楓の傷を(えぐ)ることにもなりかねないものだ。当然桜も亜沙も反対した。しかし、柳哉の意思を覆す事はできなかった。

『古くから治療することを“手当て”と言いますが、どういう意味か知ってますか?』

『怪我とかをした所に手を当てて治療するから、じゃないの?』

 実際のところは“手当て”という言葉そのものに既に“処置”という意味があるからであって、亜沙が言ったのは違うのだが。

『でもまあ、俺は亜沙先輩が言った意味の方が好きなんですけどね』

『そう。でもそれがどうしたの?』

『要するに、傷を治療するためには傷そのものに触れなきゃならないってことです。場合によっては傷をさらに広げたりする必要がある。手術なんかはその最たる例でしょう?』

『……』

『……』

 沈黙する桜と亜沙。

『……心の傷、というものも例外じゃない』

 傷というものは、ある程度までなら放っておいても自然に治るものだ。

『しかし、ある程度以上になると、放っておけば雑菌が入ったり化膿したりして悪化する。最悪の場合、命にも関わる』

 ましてや心の傷のような目に見えない傷の場合、事態はさらに深刻になる。体の傷の場合、痛みや体調不良などのシグナルがあるものだが、心の傷の場合、本人がそれを隠してしまえば、周囲の人には分からないし、何より、傷の大きさがどのくらいなのかの判別が非常に難しい。さらに言うなら、本人がそれを傷と認識していないことさえある。“心”と言うものはそれだけ複雑なものなのだ。柳哉は実際には見ていないが、八年前の事件の際には楓が現実を受け入れられず、寝たきりになり、コミュニケーションすら取れなくなってもいる。

『とりあえず話は分かった』

 納得はしてないけどね、と付け加える亜沙。しかし、

『あと、これに関しては俺一人でやる』


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