第二章
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「お兄さんだな」
「ええ、二匹はね」
夫婦はクレメインタインに寄り添う二匹を見て話した。
「そうなってるわね」
「それであの娘をいつも慰めてくれてるな」
「犬同士だとね」
それならとだ、妻は話した。
「心を開いてくれるわね」
「そうだね、僕達にはまだまだでよ」
「私達は絶対にいじめたりしないから」
クレメンタイン、彼女をというのだ。
「だからね」
「いつも優しく接していこう」
「そして徐々にでも」
「心を開いてくれればいいね」
「若しそうしてくれなくても」
心を開いてくれずとも、というのだ。
「あの娘が穏やかに暮らせるなら」
「それならね」
「いいわね」
「そうだね、それじゃあ」
「ええ、これからも」
「優しく接していこう」
「あの娘に」
こう話してそうしてだった。
夫婦は壁を向いたり隠れたりばかりしているクレメインタインに優しく接し続けた、彼女はずっと怯えていたが。
それでもだ、彼女も。
徐々にでも懐いてきた、そして八ヶ月も経った時には。
「クゥ〜〜ン」
「クンクン」
「クゥン」
サンタとワイラーと一緒にだった。
夫婦のところに来る様になった、二人をじっと見たり。
そして散歩に連れて行ってもらって尻尾を振る様になった、夫はその彼女を見て妻に笑顔で話した。
「心を閉じていても」
「それでもね」
「ずっと優しく接して」
「真心を見せると」
「心を開いてくれるよ」
「そうね」
そうなるというのだ。
「クレメンタインもね」
「最初は怯えてばかりで」
「見ていて気の毒な位だったけれど」
「それがね」
「心を開いてくれるわ」
「こうして」
二人で話した、そしてだった。
二人が三匹を親戚に預けてパラグアイまで旅行に行った時にだった。
レストランで相席になった夫婦がいた、還暦を迎えたと思われる夫婦で二人共黒髪に白いものがかなり混じり浅黒い肌だ。
相席になったので会話をした、夫の方はパブロ=ヴィアラマヨールと言って妻はミカエラといった。その夫婦のところに犬がいた、その犬は。
まだ子犬で雄だった、クリーム色の毛であり垂れ耳だ。
「ワンワン」
「可愛い子ですね」
「お二人の愛犬ですね」
「ロレンツォっていうんだ」
夫の方が二人に答えた。
「この子は」
「大変な目に遭った子なの」
妻はこう言ってきた。
「この子は」
「大変?」
「大変っていうと」
「捨てられたの」
「それもね」
妻は顔を顰めさせて述べた。
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