らしくない
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シリルはその問いに力強く頷きます。
「はい。こうでもしなければ、今の状況を打破することはできません」
その瞳に宿る意志の強さにざわついていた皆さんが一斉に静かになります。確かに彼の考案した作戦は効果的ではあると思います。でも・・・
(全然シリルらしくない作戦・・・どうしたんだろ?)
普段の彼なら絶対に思い付かないような作戦。それを聞いて以前の嫌な記憶が蘇ります。
真っ白な翼を背にしているのに、まるで悪魔のような表情を浮かべる少年。荒くなった言葉遣いと周囲を気にしない攻撃を放っていたあの時の姿と、今の姿が重なってしまいます。
ギュッ
「??どうしたの?ウェンディ」
心配して思わず彼の服を摘まむと、肝心の彼はキョトンとした表情を見せます。その姿は、あの時の彼とは全く異なっており、少し安心しました。
「ううん。なんでもない」
たぶんぎこちない笑みを浮かべていることでしょう。無理に作ったそれを見て、シリルは首をかしげますが、今はそれよりも皆さんにさらなる詳細を話すことにしたようです。
(大丈夫・・・あの時だって問題なかったんだから)
彼はいつだってなんとかしてきました。あの時も色々あって元に戻れましたし・・・でも、この心の中にある不安は一体何なんでしょうか。
第三者side
「・・・すぐに配置を変えられるか?」
「何かありましたか?」
黒髪の青年の問いにわずかに白髪が混じり始めている中年の男が答える。質問に質問を返された彼は特に表情を変えることなく小さく頷いた。
「以前市民たちが襲撃に使ってきた地下通路・・・あの出口に人を固めろ」
「わかりました。おい!!」
「はい!!」
すぐに部下を向かわせる男。指示を受けた青年はすぐに他の者に指示を出すために部屋を出る。
「・・・?」
「今度はどうしました?」
外の様子を見ていた彼の表情が曇ったことで同じ景色を見ようと横に立つ。だが、案の定そこには何もいない。
「追加の指示だ。出口からはある程度距離を取っておけ。蓋が開いたからといって、すぐに突っ込まないように」
「承知しました」
通信用の魔水晶でその指示をそのまま伝える。それに部下たちは納得していない様子だったが、とにかく指示通りに動かすことしか彼にはできない。
(理由を教えてくれればもっとしっかり動かせるのに)
言葉数の少ないリーダーに思わず苛立ちが立ち込める。窓に映る彼を睨み付けようとした時、不意に青年がこちらを向いたことで体が震えた。
「不満か?」
「い・・・いえ」
「嘘をつかなくていい。君たちの思考は全部わかっている」
ニヤリと笑
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