五十二 潜入
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自らの血で描いた陣の上で、術者が受けた傷が対象にも同様に現れる特異な呪術だ。
身体がリンクされた後は何処へ逃げようとも攻撃を回避するずべはなく、不死である飛段にしか実質使えない、必殺の威力を誇る術。
「その顔が見たかった…!恐怖で歪んだその顔がよぉッ」
歓喜の色が滲んだ声を弾ませ、飛段は円陣の中で棒の尖端を自身の胸へ向けた。
倒れたシカマルの恐怖の表情を恍惚と見下ろし。
「死ねぇえぇぇッ!!」
己の心臓目掛けて突き刺した。
雷撃が飛び交い、風が荒れ狂う。
主を失っても猶、襲い来る能面の化け物の攻撃。
それらを避けていた再不斬とカカシは、能面の化け物の不可思議な行動に眼を見張る。
カカシが心臓を穿った角都の遺体が風に煽られる。
その体へ化け物の一体が飛び掛かった。
否、飛び込んだと言ってもいい。
やがて、静かだった角都の遺体がドクドクと脈打ち始める。
能面のお面がパリン、と割れた。
「チッ」
「しまった…!」
もう一体の化け物の攻撃に注意を引かれたせいで反応が遅れた。
舌打ちする再不斬の隣で、カカシが歯噛みする。
死んだ身ではどうすることもできないという先入観。
しかしそれは何度も心臓を入れ替え、ストックし、永く生き続けてきた角都の前では覆される。
ゆらり、と角都が立ち上がる。
風遁の能面の心臓を取り込み、蘇った角都の身体に、残された能面の化け物も飛び込んでゆく。
角都の身体中から黒い繊維がぶわりと伸び、触手のように蠢いた。
「……益々、化け物染みてきたな」
「ハッ!ひじきが増えただけじゃねぇか」
身構えるカカシの隣で、再不斬が軽口を叩く。
しかし、油断なく見据えるその視線の先では、角都の背後で繊維状の触手が彼の怒りに呼応するかのように逆立っていた。
「俺の心臓を三つも…」
雷遁のお面が角都の繊維に絡まるように、彼の肩に出現する。
蠢く繊維状の触手を身体中に纏わせながら、角都は自身を久々に追い込んだ敵を睨んだ。
「久しぶりだぜ…俺を此処まで追い詰めたのはアイツ以来だ」
飛段が邪神様だと崇める金髪の子どもの姿が脳裏に過る。
幼き頃のナルトを思い浮かべながら、角都は殺気を漲らせた。
「はたけカカシ・桃地再不斬…貴様らで失った心臓の補充をするつもりだったが、」
フッ、と眼を細める。そこで言葉を切った角都を怪訝に思い、カカシは彼の視線の先を追う。
タイミング悪く、「カカシ先生──!」「大丈夫ですか!?」と駆け寄ってきたチョウジといのの姿を認めて、カカシは慌てて振り返った。
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