第七十三話 王子の帰還
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ャジャルが呼び止めた。
「何か?」
「その、『眼』の事について一つお聞かせしたい事が」
「……! 何でしょうか?」
「精霊達の話では、殿下の眼はありとあらゆる物を破壊するそうでございます……そう、精霊すらも」
「……うん、どうぞ、続けて」
「ですが、人が持つには余りにも強力な力の為、使い続ければ、やがて失明してしまうそうでございます」
「だが、治りは遅いもののヒーリングで治ったぞ?」
「それは、あくまで気休めでございます。根本的には治っておりません、それどころか、ものすごい早さで眼が劣化しているんです」
「劣化か」
前の戦争の最中に、突然視力の喪失に襲われたことをマクシミリアンは思い出した。
「私の指輪の力で殿下の眼を治そうと思ったのですが、精霊達が殿下の眼を怖がって言う事を聞いてくれないのです」
「気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとうシャジャルさん」
時間が着たのか、ベルギカ号から汽笛の音が鳴り響いた。
「そろそろ時間の様だ」
「殿下……いえ陛下。このご恩は一生忘れません」
「まだ戴冠を済ませていませんよ。あ、最後にティファニアの頭を撫でさせて貰って良いですか?」
「どうぞ殿下、帰国されてもティファニアの事を覚えていて下さると、この子も喜びます」
マクシミリアンは、シャジャルに抱かれたティファニアに近づくと、そっと金髪を撫でた。
「姪のティファニアも、僕にとっては妹みたいなものですからね、絶対忘れる事はありませんよ」
「……ううん」
頭を撫でられたティファニアは、むずかってシャジャルの胸に顔を押し付けた。
「……ふふ」
マクシミリアンは愛おしそうにティファニアの寝顔を見続けた。
そんな時、水兵の一人がやって来て、間もなく出航である事を伝えにきた。
「殿下、もう間もなく出航でございます。お急ぎご乗船をお願いいたします」
「分かった……そういう訳でシャジャルさん。これでお別れです」
「ありがとうございました。こういう事を言うのは止めて置いた方が良いとは思うんですが、どうか『あの人』の事もよろしくお願いします」
あの人とはモード大公だろう、マクシミリアンは『あの人』の事を詳しく聞き返そうとせず、
「出来るだけの事はしましょう」
と応えるだけでタラップを昇り始めた。
……
東の水平線の先が太陽の光で明るく照らされた頃、ベルギカ号はけたたましい汽笛の音を上げて出航した。
汽笛の音でシャジャルの胸の中で寝ていたティファニアは、驚いたようにビクリと目を覚ました
「ひうっ!?」
「ティファニア起きたのね」
「あれ、ここは!?」
「
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