第11節「すれ違いのDissonance」
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あるはずだから……」
『うん。じゃあ、支度してくるね』
通話を終えると、肩の力が抜けてしまう。
今夜の我が家は、少し寂しくなるな……。
「……久し振りに、夕食は私がお作り致しましょうか?」
「……お願いします。今の俺じゃ、何やっても手につかないと思うので」
結局飲めなかった缶ジュースを空け、口を付ける。
先程までひんやりしていた炭酸オレンジは、とっくにぬるくなっていた。
ff
「……うぅ──」
男が目覚めたのは、自室のベッドの上であった。
しばらくぼんやりと天井を眺めた後、彼はゆっくりと上体を起こす。
「マスターッ!」
振り向くと、ベッド脇の椅子に座っていた緑髪の青年が、ペンを置いて立ち上がっていた。
白いワイシャツに緑のベストを着た青年の肌は白磁のように美しく、それでいて生気のない白であった。
「やぁ、シルヴァ……迷惑をかけたね」
「とんでもございませんッ!ご無事で何よりです」
「あれから……どれほど経った……?キャロルはどうしている……?」
「2週間です。キャロル達は、既に日本で動き始めています……」
「不覚、後手になってしまったか……ぐぅッ……」
「お飲みください、お弟子様が調合した霊薬です」
意識がハッキリしてくるのと同時に、傷痕からの痛みに顔をしかめる男。
青年から渡されたくすりのみで、霊薬を口の中に流し込む。
「上々、腕を上げたな……お陰でだいぶマシになったようだ」
「それで、如何なさるおつもりで?」
「招集。ダイン、ゲノモス、サンディを呼べ。我々も日本へ向かう」
男はベッドから起き上がるが、やはり2週間も寝たきりだったせいか、少しふらついている。
「無茶はなさらないでください。申し付けて頂ければ、我々だけでも日本へ向かいます」
シルヴァは慌てて主の肩を支える。
しかし、男はシルヴァの言葉に首を横へ振る。
「いいや、これは私が直接出向かなくてはならない問題だ。他の誰にも邪魔はさせはしない」
「……了解しました。直ちに皆を集めます」
「それと、ついでにもう一つ……」
男は机の上に置かれた固定電話を指さす。
「注文。2週間も固形物を口にしていないんだ。美味しい朝食を用意してくれるよう、頼んでくれないかな?」
翔と響がすれ違っている頃、ヨーロッパで遂に目を覚ましたとある錬金術師が、日本を目指して旅立った。
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