第三百三十三話 除夜の鐘その六
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「無茶苦茶な心身を痛めるものでもないし」
「やっていけるものね」
「厳しくてもね」
「程度があるのね」
「そうだよ、お釈迦様も凄い苦行を積んだよ」
それこそ身体が骨と皮ばかりになるまでのものをだ。
「けれどそれで悟りは開いていないよ」
「別の修行でなのね」
「至る糧にはなったけれど」
それでもだ。
「決め手じゃなかったことはね」
「事実ね」
「うん、そういうことを見てもね」
お釈迦様のお話をだ。
「どんな厳しい修行を積んだかじゃなくて」
「何を得たかなのね」
「そうだと思うよ。だからお寺に入ることも」
「悪くないのね」
「人によってはね」
これが神社でも天理教の教会でもだ。
「神仏に触れられるし」
「そのこともなのね」
「いいよ、それとね」
「それと?」
「今からね」
「ええ、お寺に入って」
「そしてね」
そのうえでとだ、香織さんに話した。
「そのうえでね」
「これからなのね」
「除夜の鐘の音を聞こうね」
「いよいよね」
「うん、中に入って」
もう門は目の前だ。
「そうしようね」
「それじゃあね」
香織さんも頷いてだ、僕達は。
お寺に入った、そして境内のお庭の真ん中位に着くと。
鐘の音が聞こえてきた、ここで僕は言った。
「はじまったね」
「ええ、これからよね」
「百八鳴るよ」
「そうよね」
「これを聞いて」
そうしてだ。
「煩悩を取ろうね」
「一年分のそれを」
「それですっきりして」
「新年を迎えるのね」
「そうしよう」
こう言った時にだった。
鐘が鳴りはじめた、その鐘の音を聴くと。
自然に心が奇麗になっていく感じがした、それで僕は香織さんに達観した様になってそれで言った。
「うん、凄くね」
「心が澄み切っていくわね」
「一年の埃がね」
心のそれがだ。
「一音一音でね」
「祓われていっているわね」
「そうなっている気がするね」
「ええ、私もよ」
香織さんは僕に達観した様な顔で答えてくれた。
「何かね」
「自然とだよね」
「そうなってきたわ」
心がというのだ。
「不思議な気持ちよ」
「そうだよね」
「一年間色々あるわよね」
「どうしてもね」
生きているとそれだけで何かとある、一年経てば相当にだ。
「そうなるけれど」
「それがね」
「一つ一つのね」
「鐘の音でね」
「そうなっていってるね」
「こうして近くで直接聴くのははじめてだけれど」
その除夜の鐘の音をというのだ。
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