夜は焼肉
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れる。
鍵さえされていなかったドアが開き、そこには和服の少女が現れた。
もっとも、落ち着いた雰囲気の彼女は、大人びた笑顔を真司と友奈に向けた。
「おや、お客人がいるようじゃの」
「こんにちは……」
ハルトは挨拶した。
「えっと……同じアパートの人?」
「そうじゃ。仙孤さんじゃ。今、このアパートの皆の衆で食卓を囲もうと思っての。よかったら来んか?」
仙孤さんとやらは、ハルトにも笑顔を見せた。
幼い少女のようでもあるが、その落ち着きようはむしろ母らしくもあった。髪の両端は大きく、まさに狐の耳の形をしていた。
「え? いや、俺はここの住民じゃないですよ? 今日ちょっと間借りさせてもらうだけで」
「よいよい。こういう時は、大勢の方が楽しいものじゃ。二人も是非どうじゃ?」
「おお! 行くぜ。あ、餃子も持っていくからな?」
まだ残っている餃子を見せつけながら、真司が笑顔で応える。
「まだ食べるの……?」
思わぬ二人の食いっぷりに、ハルトは言葉を失った。
「……ねえ」
一切焼肉に手を付けないハルトは、隣に座る真司に肘打ちする。
何やかんやで、真司と友奈が住んでいるアパート、ヴィラ・ローザ見滝原の住民全員で、焼き肉パーティの運びとなり、ハルトもそこに同席することになった。
ゲーム制作に青春を注ぐ高校生、なぜか女子高生と一緒のサラリーマン、そしてオーナーの妙齢の女性と、中々に強烈な個性を持つ住民が多い。この中だと、真司とビールを飲み交わしている平凡なサラリーマンである男性が、逆に目立って見える。
その中でも、ハルトがどうしても、気になる人物。それは……。
「真司」
「お? どうしたハルト。お前も飲むか?」
真司はハルトに乗りかかりながら、缶ビールを勧めてくる。
「俺未成年だって言ってるだろ……」
「なんだ! お前、俺の酒が……飲めないのか……!」
「何酔っ払ってんだよアンタは!」
ハルトはそう言ってデコピンを見舞う。
だが、真司はニコニコしたまま、仲が良さそうに、サラリーマンと肩を組んでいる。
ハルトは顔を引きつらせながら、同じく隣に座る友奈の肩を叩いた。
「なあ。真司、かなり出来上がってないか?」
「あ〜。大丈夫大丈夫。いつものことだから」
「いつも!?」
「どうしたのじゃ?」
友奈との会話の中、仙孤さんがやって来る。彼女は、トングに熱々の焼肉を乗せて、皆に配膳しているところだった。
「ほれほれ。お客人も食べんか。肉は熱々が一番美味しいのじゃ」
「あ、どうも……」
ハルトが差し出した小皿に、仙孤さんは肉を乗せた。
彼女はそのまま、友奈にも肉を向ける。
「ほれ、友奈どのも
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