第二章
雪ノ下雪乃は自分をごまかさない。ちなみに俺はなんもしない。
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特別棟まで来るとさすがに逃げる心配はしなくなったのか、先生はやっと解放してくれた。
でも、去り際にちらちらとこちらに視線を送ってくる。別れるのが嫌で寂しい、とか名残惜しいとか、そんな優しい視線ではなく純粋に「逃げたらわかってるだろうな」という殺意がこめられていた。
俺はその殺意をものともせず廊下を歩く。
雪ノ下雪乃のいる部室に着いた。中から男女のいがみ合う声が。入りたくねぇ...。
だが平塚先生に命を奪われるのと心の傷をつけられても、辛うじて生きているのとを比べ、俺は覚悟を決めた...。
どうせ比企谷もいるんだろう...。仲間、もとい生け贄という名の道連れがいれば諦めもつく。なにより生きているのが一番大切だ。
そうして俺は扉を開いた。
「...」
「雪ノ下。お前は異常だ。勘違いもいいところだ。ロボトミー手術とかしとけ」
「少しは歯に衣着せたほうが身のためよ?」
扉を開くと比企谷と雪ノ下がいた。雪ノ下はウフフと笑いながら比企谷を見ていた。でも目が笑ってなくて怖い。
...怖い怖い怖い怖い、よし帰ろう!
俺がひきつった笑みで教室を出ようとすると雪ノ下に存在を気づかれてしまった。
「あら挨拶もせずにどこに行く気かしら」
「何言ってるんだ雪ノ下さん。俺はただトイレに行くついでに本屋と自宅に寄ろうとしただけだ!」
自分で言っといて難だが思いっきり帰宅宣言だった。
「もしかしてごまかそうと思って言ってるのかしら...とても腹が立つのだけれど」
...駄目だなぁ、俺。どうやら自分は他人を騙したりするのは下手みたいだ...。
雪ノ下からスッゴい殺意を感じる。...くそう、こんなだからここには来たくなかったんだ。
「わかった。...トイレに行くのは、もう...やめるよ......」
「何をわかったつもりなのかしら...」
雪ノ下はため息をつきながら、いまだに俺に殺意を向けていた。ちなみに比企谷は「トイレは行けよ...」という顔をしていた。
その比企谷が思い出したように言う。
「桐山が来て話がそれたけど雪ノ下、お前何か言おうとしてなかったか?」
「ええ、底辺の比企谷くんから見れば私は異常に映るのかもしれないけれど、私にとっては至極当たり前の考え方よ。経験則というやつね」
雪ノ下はそう言って自慢げに慎ましい...いや、慎ましすぎて傍目には「どこにあるの?」ぐらいの貧度の胸を反らした。
でも途中参加の俺には何の話かわからないので比企谷に訪ねると「あぁ、実は雪ノ下が自意識過剰すぎて俺でもひくレベルなんだ...。あと桐山、トイレは行けよ?」ということだった。トイレ? 行くけど、多分今行ったら二度と帰ってこないよ? ...行ってきます!
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