第二章
雪ノ下雪乃は自分をごまかさない。ちなみに俺はなんもしない。
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もう充分なってるから安心しろよ」
比企谷がそう言うと、雪ノ下は小さく深呼吸した。
まぁ、比企谷の言った通り、これ以上嫌な気分になることは多分ない...よな。もう嫌な気分でお腹一杯だし。
「私って昔から可愛かったから、近づいてくる男子はたいてい私に好意を寄せてきたわ」
「ギブ。さらに野菜マシマシ化調マシくらいの重量だわ、これ」
そんな言葉が比企谷の方から聞こえてきた。確かに聞いていたくない話であることは間違いない。
...ホント、才能ある完璧超人とか失せろ。
それより比企谷。野菜マシマシなんとかってなに? 俺知らないよ。
俺がとぼけたことを考えている間にも雪ノ下は話を進める。
「小学校高学年くらいかしら。それ以来ずっと...」
話しているときの雪ノ下の表情はやや陰鬱だった。
俺にはわからないが他人に好かれるとはどういうものなのだろう。別に他人に好かれたくないとまでは思ってない俺ではあるのだが、雪ノ下のように常時、異性からの好意に晒され続けるのは絶対に嫌だ。
だけどそんなん俺と変わらない。あらゆる他人から嫌われてきた俺だ。ま、今はたいてい他人から感情を向けられないから関係ないけど...。
簡単な話である。他人の意識の中に俺はいないのだ。だからもし、ほんとに稀に俺の存在に誰かが気づいても、あまりの存在感のなさと自然に滲み出る俺の「話しかけない方がいいよ」オーラがあるため、すぐに忘れてしまったり、何となく関わるのを止めてしまうのだ。
最近はそれを生かした職業を考えている。...やっぱ忍者かな。まぁ、俺の適職の話はいい。
「まぁ、嫌われまくるより、いくらかいいだろ。甘えだ甘え」
比企谷が言った。それを聞いた雪ノ下は短くため息をついた。てっきり笑顔かと思ったけど違った...。
「別に、人に好かれたいだなんて思ったことはないのだけれど」
そういった後に、ほんのわずかばかりの言葉を付け足した。
「もしくは、本当に、誰からも好かれるならそれも良かったのかもしれないわね」
消え入りそうな声。俺もなんかしゃべろ。
「その感じだと本当に好かれていたわけじゃなかったんだな」
「ええ、例えばあなたの友達で、常に女子に人気のある人がいたらどう思う」
「愚問だよ、それ。俺は友達いないから、その状況はあり得ない...」
自分でも驚くほどのクールで男らしい回答。
タイムラグはゼロ。即答だ。本当に驚いた。その驚きは雪ノ下も同様のようで、言葉につまり口をぽけっと開けていた。
「...一瞬、かっこいいことを言ったのかと勘違いしたわ」
そう言うと雪ノ下は額に手をあてて俯いてしまった。
頭痛かな? えーと、頭痛からくる風邪には何のベンザだっけ?
......違うよね
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