第二章
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美幸の顔についてだ、母に話した。
「もう聞かないわ」
「そうしてね」
「人は顔じゃないわね」
「顔立ちじゃないのよ、人相よ」
「そうよね」
「元のお顔はよくてもね」
それでもというのだ。
「性格が大事でしょ」
「そうよね、性格がお顔に出るから」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「大事なのは人相よ」
「それを見ることね」
「そうしてね」
こう話してそうしてだった。
手術を受けて目が治る時を待った、手術の時が遂に来て彼女は目を治してもらった。
そして目が見える様になる、これまで目を覆っていた包帯が外れる時に周りの声が聞こえた。
「松本さんが訪台外すのよね」
「ずっとあんなこと言ってたけれど」
「こんな美人いないとか」
「遂にその顔見られる時来たけれど」
「どういうつもりかしら」
「あの顔見せてもそう言えるの?」
「言えたら凄いわ」
美幸の同僚の看護師達の声だった。
「あの顔でね」
「さあ、遂に包帯取れるけれど」
「どうかしら」
こうした声が聞こえてきた、そうして。
美幸が包帯に手をやった、その時に寿里は入院してからのことを思った。
目が見えなくなり診察を受けてすぐに治療と手術の為に入院することになった、その時に美幸が担当になりそれからだった。
ずっと彼女に目は絶対に見える様になる、安心していいと言ってもらい何かと楽しい話をしてもらって散歩にも連れて行ってもらい入浴もトイレもいつも嫌な気配なぞ全くさせずに優しく接してくれた。
彼女の手は声と同じだけ優しく温かかった、寿里は入院している間ずっと彼女がいてくれてよかったと思った。その彼女がだった。
包帯を外した、そのうえで寿里に言ってきた。
「さあ、いいわよ」
「目を開けていいですか」
「ええ、そうして」
「はい」
寿里は頷いてだった。
瞼をゆっくりと開けた、長い間閉じられていたので。
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