第一章
[2]次話
究極の美人
時平寿里はこの時目が見えなかった、それで入院して多くの時間をベッドの上で寝ていた。薄茶色の髪の毛でやや丸顔でピンクの唇は小さい。背は一五四センチ程で胸は小さいがスタイルは全体的にいい感じだ。
本来は大きくて奇麗な目だが今はその目に白い包帯が巻かれている。
そのうえでベッドの上にいたが。
看護師の松本美幸にいつも言われていた。
「大丈夫よ、その目はね」
「よくなりますか」
「手術を受けたらね」
それでとだ、美幸は今は自分が手を取って歩かせている寿里に話した。
「それでね」
「また見える様になるんですね」
「少しの辛抱だから」
目が見えないことはというのだ。
「だから手術を受けて治ったらね」
「またですか」
「見える様になって高校にもね」
「また通えますね」
「そうなるわ、そしてね」
美幸は笑顔で話した。
「その時に私もね」
「見られますね」
「見て驚くわよ」
笑顔の声であった。
「私があんまり美人だから」
「そうですか」
「だから期待していてね」
美幸は寿里に笑って言った、寿里は目は見えないがそれでも彼女の声でそうなっていることはわかった。
だが美幸が去った後で。
「よくあんなこと言えるわね」
「そうよね、あの顔で」
病院の美幸の同僚の看護師達が言っていることが聞こえた。
「何処が美人よ」
「そんなこと思う人いないわよ」
「目が見えないからってね」
「それをいいことにあんなこと言うなんて」
「どうかしてるわ」
「全くよ」
こうした声が聞こえた、それで。
寿里は不安になってだ、見舞いに来た母に尋ねた。母の名前は凛といって寿里をそのまま成長させた様な外見だ。
「あの、松本さんって」
「看護師さんね」
「どんな人なの?」
「とてもいい人よ」
母はこう娘に答えた。
「本当にね」
「そうなの、それでお顔は」
「あの、寿里」
その質問にはだった、母は。
真剣な顔になった、そして真剣な声でベッドの上で身体を起こしてそのうえで自分に問うてきた娘に話した。
「その質問はね」
「よくない?」
「お母さんいつも言ってるわね」
こう言うのだった。
「人の顔のことはね」
「言わないことね」
「そう、人の顔のことはね」
それはというのだ。
「言わないことよ」
「それでなのね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「あまりね」
「言わないことね」
「そう、いいわね」
「じゃあ」
「ええ、このお話はね」
「それでなしね」
「そうしてね」
こう娘に言うのだった。
「いいわね」
「そうね」
寿里は母の言うことをもっともだと頷いた、そうしてだった。
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