第三百三十二話 大晦日のデートその九
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「嫉妬している余裕なんてね」
「なかったのね」
「その筈なのに」
それでもだ。
「嫉妬していたらしいからね」
「他の人気作を描いていた漫画家さんに」
「もう水木しげる先生に対しては凄かったらしいよ」
巨人の星について何処が面白いのか教えてくれと言ったり水島新司先生に君は野球だけ描いて人気が出ていいねとか言っていたのも嫉妬だったみたいだ。
「気が狂わんばかりだったっていうから」
「そんなに凄かったの」
「そうみたいだよ」
聞く限りではだ。
「何でもね」
「それはまたね」
「そこから作品描いたから」
どろろという作品をだ。
「嫉妬を昇華させたけれど」
「嫉妬すること自体が」
「ちょっと以上にね」
あれだけのヒットと名声を得ていてしかも多忙を極めていてだ。
「凄いよね」
「だって手塚治虫ってね」
香織さんもこの人について話した。
「滅茶苦茶売れっ子だったのよね」
「もうデビューしてね」
昭和二十一年位にだ。
「すぐにね」
「売れっ子よね」
「鉄腕アトムが特に有名で」
何といってもだ。
「それでね」
「国民的な漫画家さんになったのよね」
「それで漫画自体をね」
このジャンルの創作をだ。
「確立したって言ってもね」
「いい人よね」
「もう昭和を象徴する人だよ」
そうした人の一人だとさえ思う。
「この人と美空ひばりと何といっても昭和帝」
「天皇陛下とさえってことね」
「そこまでの人だったと思うよ」
それこそだ。
「昭和帝が崩御されて」
「確か殆ど同じ時期に」
「美空びばりもこの人もね」
「お亡くなりになってたわね」
「それで昭和が終わったから」
年号的には昭和帝の崩御で終わった、しかし昭和という時代は昭和帝の崩御に加えてであったのだと思う。
「美空ひばりが亡くなって」
「そして手塚治虫さんも」
「亡くなったのは後でも」
どろろを描いた頃から二十年は経っていた。
「けれどその時もね」
「確かな名声を得ていて」
「不動と言ってもね」
もうそこまでだったと思う。
「地位を築いていたよ」
「そうだったのに」
「しかも連載も短編も幾つも描いていて」
生涯多忙な人だった、だから徹夜もざらで寿命を縮めたと思う。
「大変な忙しさだったのに」
「嫉妬してたのね」
「水木しげる先生にね」
「そうだったのね」
「人気があるだけじゃなくて」
それに加えてだ。
「面白いと思って」
「そうしてね」
そのうえでだ。
「自分も描きたいってね」
「思ってなのね」
「そこまで嫉妬したらしいよ」
それこそ気が狂うまでにだ。
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