第三百三十二話 大晦日のデートその一
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第三百三十二話 大晦日のデート
遂に約束の時間になった、僕はここで畑中さんに言った。
「お話の途中で申し訳ないですが」
「外出されますね」
「そうしてきます」
「わかしました、私もです」
畑中さんも笑顔で応えてくれた。
「妻のところに戻ります」
「そうされますか」
「明日は子供や孫、曾孫達と共にです」
「お正月をですね」
「過ごします」
「そうされますか」
「お正月もこちらに戻りますので」
こう僕に言ってくれた。
「ご安心を」
「ですがご家族と」
「今はこの八条壮にお家があるので」
「奥さんとお二人で住まれているので」
「ですから」
それでというのだ。
「戻ります」
「そうしてくれますか」
「ですからご安心を」
「申し訳ないですね」
「申し訳なくはないです、来年もです」
「この八条荘で」
「宜しくお願いします」
「それでは」
「私の夢は百歳まで修行をして」
直新陰流をというのだ。
「百歳まで働く」
「それが畑中さんの夢ですか」
「ですから来年もです」
「働かれますか」
「そうさせて頂きます、実は大学にいた時に」
八条大学だ、畑中さんもこの大学の出身なのだ。
「悪魔博士から言われました」
「あの百五十歳っていう」
「私の頃にもあの様にです」
「ご老人だったんですか」
「はい、その頃で七十いえ百歳近いともです」
「言われていたんですか」
「江戸時代生まれともです」
明治どころかだ。
「言われています、日清戦争の頃には教授だったそうですし」
「十九世紀ですよ」
一八九四年のことだ、もう歴史のことだ。
「そして維新直後の大学開設の時にはもう」
「大学におられたんですか」
「その様です、記録を見ますと」
「人間じゃないみたいですね」
事実人間じゃないのじゃないかと言われている人だ、だから仇名が悪魔博士なのだ。確か亜隅さんという名字で無数の博士号を持っているからだ。
「何か」
「仙人説もありますね」
「そうですよね」
「その博士から私は少なくとも百二十まではです」
「生きられるとですか」
「妻もそうだと言われました」
「そうだったんですね」
「ですから」
それでというのだ。
「その時に思いました」
「百歳まで修行して」
「百歳まで働こうと」
「そうだったんですね」
「その時私は出征直前で生きて帰るとは思っていませんでした」
戦争に行けば死ぬ、だからなのは僕にもわかった。
「ですが」
「生きて帰って来られて」
「その時に決めました」
「百歳までですね」
「そうしようと」
「そうだったんですか」
「博士は人相見も出来るそうで」
博士号だけでなく色々知っている人らしい、何
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