第二章「クルセイド編」
第十八話「少女の激情」
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サー!?」
冷静沈着を地で行くバルディッシュも流石に焦り声を上げた。確かにその声には迫力もあるし気持ちも強い。普通なら歓迎すべき事なのにそれでもバルディッシュが焦り声を上げるのは何故か、
フェイトは今、自分の悲しみを全て叩き付けようとしているのだ。バルディッシュには自分が振るわれるだけで主が今どんな状態なのかわかってしまう。気持ちでは強いはずのその攻撃は到底美しいとは言えない軌道を描いて謎の剣士に襲い掛かった。
「おおおおおおお!!!」
当然そんな無茶苦茶な軌道では当たるものも当たらない。せめてフェイトが冷静ならマトモな攻撃を……いや、それ以前に一当てして逃走と言う選択肢をバルディッシュに言われるまでも無くとっただろう。フェイトは教えに忠実な生徒で彼女に魔法を教えた教師はそう教えていたはずなのだ。
「そんな無茶苦茶な攻撃では私には当たらないぞ」
「五月蝿い、どんな戦い方をしようと私の勝手」
フェイトの眼光に若干の怯えを見せた敵も直ぐに冷静さを取り戻したのか再び剣を振るい始めた。一合、二合と斬り合いが始まる。だが言うまでも無く圧倒的にフェイトが不利だった。謎の剣士の振るう剣は重く、確実にフェイトの体力を奪って行く。その事がわかっているのかフェイトの顔にも焦りが見え始めた。
「勝手、か。まあ良いだろう、私は今それで助かっているんだからな」
「ぐっ!?」
再び剣を振りかぶって一閃。今度もフェイトはそれをバルディッシュで受け止める。鈍い音と共にフェイトの細腕は悲鳴を上げる。今の彼女は持ち味のスピードを生かそうとすら考えてはいない。地力がどうこう云々以前の問題だ。これでは勝負にもならない。
「サー!逃げましょう、今の貴方じゃ無理です!」
「ハァ…ハァ…黙ってって、言ったよね。バルディッシュ」
「サー!?」
よもやバルディッシュの忠告にも耳を貸そうとしない。なのに戦意だけは体から溢れるように出ていて……いや、これはもう戦意ではない。狂気だ。それも本当に純粋な、怒りも何も無い狂気だ。狂気と嵐のような激情が彼女を支配していた。
「愚かな……」
そんなフェイトを見て剣士は寧ろ哀れむような声でそう言った。
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