第二章「クルセイド編」
第十八話「少女の激情」
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が、リオンは生憎その住人ではない。異界の技術である晶術にそんなシステムは盛り込まれていないし、如何に優れた技術者が揃っていようと稀代の大天才ハロルド・ベルセリオスの発明品たるソーディアンをいじくる事などできる筈もない。それこそ気の遠くなるような時間がかかってもレンズの無いこの世界ではシャルティエに非殺傷設定を付加する所かシャルティエが喋るメカニズムすら解明はできないだろう。あわや八方塞がりかと思われたその時スプーキーはある事を言った。
「どうしてシャルティエさんの声は魔道士なら聞こえるんすかねえ?」
そこからある仮説が立てられた。『シャルティエの声は念話に近いものでは無いか?』
つまり魔法と晶術は近い力なのではないかと言う推測だ。そもそも非殺傷設定とは魔力を武器や攻撃に作用させて無害化する、例えるなら剣の刃を潰すと言う事である。魔法同士で殺傷できる層を無害化する層で持って覆い魔力弾なら着弾時に無力化すると言うメカニズムなのである。
これは魔法でなく普段我々が口にしているコーヒーでさえ同じ様な事が言える。砂糖を大量に入れた層とそうで無い層……つまりは濃度によってコーヒーはコップの中で層を作る事がある。簡単な話それと同じだ。非殺傷設定は魔力を濃度ではなく、性質で分ける事によって引き起こす言うならば化学反応なのだ。もし魔力と晶力が近いものならば、その応用で非殺傷設定も組めるのではないか……二人の天才はそう考えた。
「コレで良いのか、エレギオ・ツァーライト」
「ああ充分だ。戻ろうぜアジトに」
言い終わるや否や、少し離れた所にドラギオンが着陸した。開いたハッチからジャックが手を振っている。最初は外見でもその性格でもなく普通にドラギオンに乗るのをリオンは渋っていたのだが乗ると嫌でもジャックの操縦者としてのセンスが飛び抜けた物であると悟った。無論そういう補助もあるのだろうが、傍から見ると肝が冷えるアクロバティックな飛行をしているのにも拘らず中は恐ろしく安定しているのだ。リオンも全く酔わない。また中は外見で予想できるよりも広く、乗り心地が良くて度々驚かせることとなった。
「ドラギオン、離陸」
その声を聞いてからしばらくたって、エレギオがリオンに窓の外を見るよう促した。
「……マルチネスだな」
向こうからも手を振っているのが見える。ある意味「漆黒の翼」を思わせるような連中だが関係は勿論無い。
「ククッ、あいつら和むぜー」
その中でモールとスプーキーが取っ組み合いを始めたのを見てエレギオは笑った。彼等のほうの操縦は自動運転にしてあるのでああやって喧嘩してようが何してようが問題ないらしい。リオンからしたら和むも何もあった物じゃないが。今もエレギオの首をシャルティ
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