第10節「迷奏の序曲」
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ロルちゃんからは、今まで戦ってきた人達とは違った空気を感じた。
了子さんの中にいたフィーネは、愛する人ともう一度言葉を交わしたくて、月を壊そうとした。
マリアさん達やナスターシャ教授は、月の落下から皆を救おうとして、結果的にわたしたちと対立してしまった。
ウェル博士は……なんだろう。自分の夢に正直過ぎたというか……もっと色んな人達と手を繋げていれば、あんな事はしなかったと思う。
皆、どうしてもそうしなくちゃいけない理由があって、誰かと戦う事を選んでしまった人達だった。
でも、キャロルちゃんはそうじゃなかった。
キャロルちゃんは出会ったばかりのわたしに、激しい敵意と怒りをぶつけてきた。
それに、最初からわたしたちと戦うつもりで準備してきていた。
それも自分から「オレと戦え」なんて言ってまで……。
翼さんやクリスちゃんならきっと、売られた喧嘩は買うって言い出してたと思う。
でも、わたしはそうじゃない。わたしには、キャロルちゃんと戦う理由なんてない。
戦う理由が無いんだから、話し合って解決できたらいいなって思う。
だけど、キャロルちゃんはそうじゃないみたいで、わたしと戦う事を望んでいる。
シンフォギアで……ガングニールの力で、誰かを傷付けたくなんてないのに……。
でも、そう言ったら奏さんに怒られた。
マリアさんからは、逃げるなって言われた。
わたしは……どうすればいいんだろう。
迷い始めると、何もわからなくなっちゃった。
どうして、わたしはシンフォギア装者をやっているんだろう?
どうして、わたしは唄えなくなったんだろう?
わたしが戦う理由って、なんだっけ?
「ねえ、翔くん……わたし、どうすればいいのかな……?」
きっと翔くんなら、この問いに答えてくれると思う。
わたしの迷いなんか笑い飛ばして、背中を押してくれる一言をくれる。
翔くんなら──って、わたしはそう思っていた。
その一言が、返って来るまでは。
「だったら、ここが潮時だと思う」
「潮時……って?」
言葉の意図が分からず、翔くんの顔を見る。
翔くんはわたしの方ではなく、明後日の方向を見つめながら、冷たい声でそう言った。
「シンフォギアを辞めるべきだ、と言ったんだ」
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