第10節「迷奏の序曲」
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た。
「──そうだッ!ガングニールはお前の力だッ!だから……目を背けるなッ!」
「……目を、背けるな……」
その言葉は、響の心に重くのしかかるのだった……。
その日の夕方。
本部の甲板から、わたしは海を眺めていた。
手すりにもたれて、ぼーっと水平線を見つめながら、奏さんとマリアさんの言葉を反芻する。
『戦う理由を失ったやつに、あたしの槍を振るう資格はないよ』
『──そうだッ!ガングニールはお前の力だッ!だから……目を背けるなッ!』
(逃げてるつもりじゃない……けど……)
その時、頬にピトッと冷たい何かが当てられた。
「ひゃうぅっ!?ちべたいッ!?」
「ははは、ビックリしたか?」
「も〜、おどかさないでよ〜」
気がつくと、わたしの後ろには翔くんが立っていた。
いたずらっ子のように笑う翔くんから、缶ジュースを手渡される。ラベルは炭酸のオレンジジュースだった。
翔くんはわたしの隣に並ぶと、静かに切り出した。
「悩んでるんだろう?」
「……翔くんには、やっぱりお見通しなんだね」
「見れば分かるさ。未来も心配してたぞ」
「うん……」
そして、訪れる気まずい沈黙。
お互い缶ジュースを空ける事もなく、ただ波の音だけが響いている。
……翔くんになら、打ち明けられるかもしれない。
翔くんならきっと、わたしの悩みに答えてくれる筈だから。
「翔くん、わたし……どうすればいいのかな……」
キャロルちゃんに出会ってから、ずっと悩み続けて来た事を言葉にして、翔くんに伝える。
「わたしね、ガングニールの力は人助けの為のものだと思ってたんだ……。ノイズから皆を守る、わたしだけにしか出来ない人助け。その為の力だって、ずっと信じてきた」
「ああ……そうだな」
「ノイズが居なくなってからも、スペースシャトルから宇宙飛行士さん達を助けたり、火事になったマンションから街の人達を助けたり……。戦わなくても人助けが出来るんだって気付けた時は、すっごく嬉しかった。前よりももっと沢山の人達を助けられるんだって」
了子さんが、ノイズから皆を守る為に造ったシンフォギア。
それは、ノイズが居なくなったらもう使われなくなる物だと思っていた。
でも、ノイズが居なくなっても、シンフォギアを必要とする人達がいた。
そして、シンフォギアは戦うためじゃなくて、困ってる誰かの命を助ける為の力として使う事が出来る。ここ半年近くの活動で、沢山の人達を助けられた事が、わたしにとってはすごく嬉しかった。
「でも、キャロルちゃん達が現れて……せっかく戦わなくてもよくなったのに、また誰かと戦わなくちゃいけないのが嫌になって……この拳を握るのが、怖くなっちゃったんだ……」
キャ
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