暁 〜小説投稿サイト〜
DOREAM BASEBALL 〜夢見る乙女の物語〜 
彼女たちの日常
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を向けると栞里は隣の席にいる伊織を睨む。それに彼女はどや顔で返してみせると、机の下で何かを弄っている。

「ちょっと……少しは手を抜いてよ」コソッ
「あれ?降参ですか?」コソッ
「誰がするか……」コソッ

周りに聞こえないくらいの声で話をしている二人の手には古いタイプのゲーム機が握られている。実は二人はお昼ごはんを賭けてゲームで対戦していたのである。当然ではあるが、ノートは取っていない。

「あぁ〜!!」
「新田さん!!」
「すみませんでした!!」

負けてしまったことで絶叫の栞里。お昼を奢らされる上に教師からも怒られまさに踏んだり蹴ったりになっていた。
















その頃……

「町田先生、またそれを見てるんですか?」

多くの教師が授業のために席を外している東英学園の職員室。その時間は授業が入っていなかった監督の青年はスコアブックを眺めていると、後ろから同僚に声をかけられる。

「えぇ。データはあるに越したことはないですからね」
「あまり無理しないでくださいね。授業もあるんですから」
「ありがとうございます。気を付けます」

爽やかな笑顔で返答する町田。若いことや締まった体をしていることから若い女性教諭や生徒からも人気が高い彼と会話ができ、彼女は嬉しそうに離れていく。

「チッ……うっせぇな」コソッ

しかし、彼の腹の中を把握しているものは誰一人いない。

(明宝はまた陽香頼りの守りだろうな。となると打撃陣をいかに抑えるかが勝負の鍵か)

そう考えつつも、彼の中では戦い方は既に決まっている。相手のやり口がわかっているからこその自信と言えるのかもしれない。

(真田監督は自分を曲げないからな。もっと柔軟だったら、甲子園の名将として取り上げられただろうに)

不意に思い出す彼の背中。その頼りになる背中を思い出す度に、尊敬と苛立ちが立ち込めてくる。

「もっと期待に答えてくれよ、監督」







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