第二百二十話 ハイランダーの影その十二
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玉座があり見事な装飾があった、だが。
「誰もいないな」
「気配はない」
正が言ってきた。
「全くな」
「もう皆逃げたな」
「間違いなくな」
「抜け道使ってだ」
「全員逃げた後だ」
「そうだな、じゃあ抜け道を探してな」
そのうえでだとだ、久志は述べた。
「そうしてな」
「敵を追ってだな」
「どういった抜け道かをな」
このことをというのだ。
「調べるな」
「そうするな」
「敵に追いつけたらいいが」
ここで久志は自分の考えを述べた。
「しかしそうでなくてもな」
「どういった抜け道かだな」
「調べてわかったらな」
「それでいいな」
「ああ、それでな」
こう言うのだった。
「いいさ」
「第一はそれだな」
「そういうことだ、しかし見事に逃げたな」
久志は今度は敵のことを褒めた。
「本当にな」
「そうだな、動ける兵を全て部屋に集めてな」
「そしてだな」
「鍵閉めてな」
「それから逃げたな」
「それでな」
そのうえでというのだ。
「抜け道の入り口も隠して」
「いい具合に退いた」
「随分慣れた手並みだった」
久志は感嘆の言葉さえ述べた。
「敵の後詰めの指揮官は本当にな」
「見事な奴だな」
「ああ、ここまで的確に退くなんてな」
それでというのだ。
「相当な奴だ」
「そのことは間違いないな」
「戦は本当に退く時が一番難しいからな」
これまでの戦でわかってきたことだ、戦は攻める時ではなく退く時こそが最も難しいとだ。これまでの戦で退く敵を追撃してきてわかったのだ。
「それをここまで見事に出来たからな」
「かなりの奴だな、ではな」
「そいつはな」
「帝国に入れるならな」
「重く用いるな」
「そうしろ」
正も言った。
「いいな」
「そうするな、じゃあな」
「今からだな」
「抜け道を探すな」
こう言ってだった。
久志は自分も動きそのうえで抜け道を調べた、すると。
ふとだ、兵の一人が玉座に触れて言った。
「玉座が動くみたいです」
「それがか」
「はい、動かしてみますか」
「ああ」
即座にだ、久志は兵に答えた。
「若しかしてそこがな」
「抜け道ですか」
「そうかも知れないからな、だからな」
それでというのだ。
「動かしてくれ」
「それでは」
「今から頼むな」
こう兵に言ってだった。
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