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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
第三百三十一話 大晦日も二人でその六

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「お口の周りについたりしてもね」
「そうなのね」
「親父芥川の芋粥も好きで」
「山芋出るしね」
「あの作品面白いしね」
 芥川の中期までの作品はそう言っていい作品が多い、晩年の暗鬱だったり狂気に陥っている作品は読んでいて辛い。
「僕も読んだよ」
「山芋食べたくなるわね」
「そうだね、実は今も食べようかと思ったけれど」
 それでもだ。
「今は寒いから」
「お外はね」
「そんな中でずっと歩くから」
 そのことを考えるとだ。
「今温まった方がいいから」
「それでよね」
「温かいお蕎麦にするよ」 
 三杯目もだ。
「そうするよ」
「たぬきそばね」
「それを食べるよ、けれど沢山食べていても」
 それでもだ。
「まだもう一杯いけそうだね」
「三杯目食べてもなのね」
「うん、たぬきそばの後は」
 僕はかけそばを食べる香織さんに言った。
「何にしようかな」
「ううん、そう言われたら」
 香織さんは僕に微妙な顔になって述べた。
「山菜そばかしら」
「ああ、香織さんが最初に食べた」
「それどうかしら」
「いいね、じゃあ四杯目はね」
「山菜そばね」
「それにするよ、じゃあ三杯目はね」
 もう天麩羅そばも食べ終えた、それならだ。
「たぬきそばにして」
「四杯目はね」
「山菜そばにするよ」
「四杯食べたらお腹一杯ね」
「絶対にそうなるね」
 三杯でもう一杯食べられそうならだ。
「それじゃあね」
「四杯も食べたら」
「もうね」
 それこそだ。
「お腹一杯だよ」
「そうなってるわね」
「お腹一杯になったらもう身体も温まってるし」
 ただ温かいものを食べただけでなくだ。
「それでお外に行くよ」
「厚着もして」
「そうもしてね、もうそうしたら」
 お腹一杯食べて厚着もしたらだ。
「寒さも怖くないね」
「そうよね」
「寒かったら服を着ろだったね」
 何でも毛沢東が言ったらしい、今の中国は水蓮さんも見てわかるけれど人民服を着ている人はいなくなった。
「それで服を着て」
「その前にお腹一杯食べていたら」
「もうね」
 それこそだ。
「寒さは怖くないよ」
「食べもので内から温まって」
「服で外からもそうしてね」
「私はカイロ持って行くけれど」 
 香織さんはそうするというのだ、やっぱり女の子の方が冷えるのだ。
「義和はどうするの?」
「僕はいいかな」 
 少し考えてから答えた、三杯目のたぬきそばを手にしながら。お蕎麦の上にある油揚げが実に食欲をそそる。
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