荒魂
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見滝原の象徴ともいえる観光名所、見滝原ドームが破壊された。
「そうだよ。なんか、楽しんでいるハルトさんを見て、私もちょっと嬉しかったし」
「……そう」
ハルトは足を止めた。
「ハルトさん?」
「俺……楽しんでいたんだ」
「? そう見えたけど……?」
可奈美が首を傾げた。
「違うの?」
「いや、その……自分では意外と分からないものだなあって」
ハルトは頬をかいた。
「そっか……俺、楽しんでいたんだ……楽しんで……いいのかな……」
「ハルトさん? どうしたの?」
「あ、いや。何でもないよ……」
ハルトはほほ笑んで流そうとする。
疑問符を浮かべる可奈美の脇を通って先に行こうとするが、その足が止まった。
「何か鳴ってない?」
ハルトの言葉に、可奈美は青ざめた。
「うそ!? これって……!?」
可奈美はそう言って、ポケットから何かを取り出した。
小さな丸い、年季の入った道具。
方位磁石のようにも見えるが、その円筒の中心にあるのは、針ではなくマグマのような液体。それが、まさに磁力に引き寄せられているかのように、特定の方角へその身を押し付けている。
「何それ?」
可奈美と一緒に見滝原で過ごしてからそれなりの時間が経過しているが、こんなアイテムは見たことがない。
そして。
そのアイテムの本来の持ち主が、可奈美ではないことなど、知る由もない。
だが、そんな道具を見下ろした可奈美の顔には、紛れもない緊張の表情が浮かんでいる。
「ハルトさん、ゴメン! 私、行かなきゃ!」
「行かなきゃって……可奈美ちゃん!?」
だが、ハルトが止める間もなく、可奈美は背負っているギターケースからピンクの棒を取り出した。
そのままギターケースをハルトへ投げ渡し「うわっ!」、可奈美はしゃがむ。ハルトが割り込むよりも先に、強化された可奈美の脚力が、彼女の跳躍力を高める。
あっという間に、可奈美の姿は町の彼方へ見えなくなってしまった。
「可奈美ちゃん……どうしたんだろう……?」
ハルトはそう言いながら、腰から銀でできた指輪を取り出す。
慣れた所作でそれを腰のバックルへ重ねる。
すると。
『コネクト プリーズ』
ベルトから、摩訶不思議な音声が流れた。
それに伴い、ハルトの傍に大きな魔法陣が現れる。
炎のように赤いその魔法陣に可奈美のギターケースを放り込み、逆に中へ手を突っ込む。すると、中からハルトのバイク、マシンウィンガーが引っ張り出されてきた。
「急がないと、見失うな……!」
ハルトはそう言いながら、アクセルを入れた。
だが、すでに可奈美の姿は、遠くのビル群の屋上になっていた。
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