5章
節分フェア
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「節分フェア! 始めるよ!」
ある日、そんな声で目が覚めた。
「……何? おはよう……」
松菜ハルトは、重い瞼を擦りながら起き上がる。
朝日が差し込む喫茶店。今日もラビットハウスの朝は静かだったはずなのだが、同居人の保登心愛に静けさは似合わない。
「ほらハルトさん! 起きて起きて!」
「ぐああ……」
寝起き早々、ココアに肩を揺さぶられながら、ハルトは悲鳴を上げた。
「起きてって……何?」
重い瞼を擦りながら、ハルトは布団の隣に置いてある腕時計を手に取る。
まだ日が昇るか昇らないかの時間に、ハルトの目が飛び出した。
「まだ朝の六時じゃん! なんでこんな時間に起こしたの?」
「だって、今日は節分だよ! 今からラビットハウスの飾りつけをやるんだよ!」
「節分……?」
そういわれて、ハルトは次にスマホに手を伸ばし、日にちを確認した。時刻の下には、なるほど確かに節分の日と書かれていた。
「うん分かった。ラビットハウスとは関係ないねおやすみなさい」
そう言って、ハルトは再び布団にくるまる。ココアはがっしりと布団を掴み、
「ハルトさん……起っきろ〜〜!」
笑顔で布団を剥ぎ取り、窓を開けた。
窓を開けた途端、見知らぬ世界などありえない。入って来たのは、今のハルトにはナンセンスな二月の寒風。
すでに着替えてきたココアと違い、布切れ一枚のハルトは、悲鳴を上げた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!」
ハルトの悲鳴が、ラビットハウスの朝に響いた。
「ハルトさん! おっはよー!」
降りてきたハルトを迎えたのは、元気な少女の声だった。
ココアよりも年下ながら、この店には彼女と同い年ということで通してある。鍛えた筋肉ながら、その四肢には無駄が一切ない。短く切り揃えた髪と、一部を黒いリボンでまとめている。
「おはよう可奈美ちゃん。やっぱり朝早くでも元気だね……」
元気な顔付きの少女、衛藤可奈美は、机の上に大きな紙袋を置きながらほほ笑む。
「ハルトさんこそ。こんな時間に起きるなんて珍しいね」
「ココアちゃんに叩き起こされたんだよ……むしろ、俺よりココアちゃんが早起きなことにびっくりだけどね」
ハルトは階段を駆け上がっていったココアの後ろ姿を見ながら呟いた。
「いつもは結構寝坊するのに……。そういえば、可奈美ちゃんはいつも早いよね」
「本当は今も朝の鍛錬に行く時間なんだけどね。あ、でも準備が終わったら行くよ。ハルトさんも一緒に行こうよ」
「この後? まあ、仕込みも終わってるし開店時間まで暇だからいいけど……それより、何でココアちゃんこんなに朝早くから
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ