後編
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に宣言する。
「元の現実に戻れるのか。どうすればいい。」
真田さんが訊き返した。
「特に何もする必要はございません。この後、各自、ご自分の部屋に戻ってお休みください。」
「それでいいのか。」
美鶴さんが拍子抜けしたように言う。
「もとよりここは皆様にとって夢の世界のようなもの。体は元の世界でベットに入って眠りについているのです。部屋でお目覚めになれば、今回の出来事はほとんど記憶にも残っていないでしょう。」
全員が顔を見合わせた。複雑な思いが交差する。
「さあ、お帰りの時間です。お部屋にお戻りください。」
エリザベスさんは追い立てるようにパンパンと手を叩いた。
なんだか煽られたような感じだが、彼女には彼女の事情があるらしい。彼女はコトワリに反する行為と言った。おそらくこの不自然な状況をいつまでも続けるわけにはいかのだろう。
みんなは疲れた体を引きずるようにして階段を下りて行った。
女性の部屋は3階。男性の部屋は2階。
『彼』の部屋は、当然2階になる。だから私と『彼』はここでお別れだ。
ふと気づくと、また『彼』の姿がおぼろげに霞んでいた。目の前にいるはずなのに、なんだかはっきりしない。
それどころか、たった今まで一緒にいたのに、その顔もよく思い出せなくなっていた。
「私達って、前にも会っていたんだね。」
私は慌ててそのおぼろげな姿に話しかけた。
「でもこれで本当にお別れらしい。」
目の前にいるはずの彼の声が、どこか遠くから虚ろに聞こえてくる。
「たとえ別の世界にいても、私たちは一緒に戦っているんだよ。」
「そうだね。そう思うと心強いよ・・・。」
彼の声はもう聞き取りにくいほど微かだった。
記憶にとどめておけなくても、心には何かが残るはず。それを信じることしかないのが切なかった。
「じゃあ。」
『彼』が片手を上げて挨拶してきた。
「頑張ってね。」
私も片手を上げてそう返す。
「お互いにね。」
そう言って背を向けた『彼』の姿は、たちまち薄くなっていき、目に捉えることができなくなってしまった。
目が覚めた。
窓の外はまだ暗い。時計を見るとかなり早い時間だ。なんだか長い夢を見ていたような気がする。
悪夢だったような気もするし、でもなんだか良い夢だったような気もする。
もうひと眠りしても良いくらいの時間だが、妙に落ち着かず、ついに体を起こして着替えた。
寝起きなのに疲れが取れていないようで、なんだか体が重かった。
階段を降りていくと、ちょうど2階で真田さんと出くわした。これからランニングに行くらしい。
「随分早いな」
真田さんが少し驚いたように声をかけてくる。
「おはようございます。なんか目が覚めちゃって。」
「俺もだ。どうも気分が落ち着かなくてな。せっかくだから少し走って汗を流してくる。な
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