第三百三十話 年越し蕎麦その十二
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「そうしましょう」
「それでは」
こう話してだった。
僕達は食堂に向かった、すると小野さんが僕に笑顔でお話してくれた。
「丁度今です」
「今ですか」
「はい、出来たところで」
「それじゃあ今からですね」
「皆さんが来られたら」
その時にというのだ。
「晩ご飯です」
「お蕎麦ですね」
「天麩羅も鴨なんばも山かけも山菜も月見も出来ますし揚げもです」
「何でもですね」
「お好きなものを召し上がって下さい」
「わかりました」
僕は小野さんに笑顔で応えた。
「そうさせてもらいます」
「もうすぐ皆さんが来られます」
畑中さんもお話してくれた。
「ですから」
「そうですね」
「存分に召し上がって下さい」
小野さんがまた言ってくれた。
「お蕎麦を」
「そうさせてもらいますね」
「そば湯もあります」
こちらもというのだ。
「こちらも宜しければ」
「そば湯もあるんですね」
「はい、お蕎麦を茹でましたから」
それ故にというのだ。
「あります」
「そば湯もいいですよね」
「そうですね、普通はお茶を飲みますが」
お蕎麦屋さんも和食のお店だ、それならお茶だ。
「しかしです」
「今日はですね」
「そば湯も用意しています」
「そちらを飲んでいいですね」
「お茶でもどちらでも」
それこそというのだ。
「飲まれて下さい」
「それじゃあ」
「はい、ただ」
「ただ?」
「関東ではそば湯がお蕎麦屋さんでは普通です」
「そういえばそうですね」
僕もこのことを思い出した。
「関東、東京では」
「お蕎麦屋さんではそば湯です」
「そちらを飲みますね」
「お茶はです」
「飲まないとされていますね」
「お茶はあがりですね」
こう僕に話してくれた。
「そう言いますね」
「あがり、終わりで」
「これで最後となるので」
それでというのだ。
「最後の一杯でないと」
「飲まないですね」
「そうなっているそうです」
「言葉遊びっていうか」
「ゲン担ぎみたいなものですね」
「そうですよね」
こう小野さんにお話した。
「これは」
「ただの言葉遊びと言えばそれまでですが」
「あちらではですね」
関東ではだ。
「そうしていますね」
「はい、あちらは何かとです」
「お蕎麦の食べ方五月蠅いですね」
「江戸っ子のこだわりです」
こだわりというか美学というか粋というか。お蕎麦のおつゆをあまり漬けないことも噛まないことも今では粋になっている。
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